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住民税について

1 住民税について
一般に個人の所得に対して、国が課税する税金が「所得税」ですが、都道府県や市区町村が課税する税金がそれぞれ「道府県民税」と「市町村民税」で、この二つを合わせて「住民税」といいます。平塚市では、神奈川県税と平塚市税をまとめて住民税として納付します。藤沢市でも同様です。 また、東京23区の場合は、「都民税」と「特別区民税」を、「住民税」といいます。

住民税とは、地域社会の費用をできるだけ多くの住民に分担してもらう、という性格を持っている税金ですが、専業主婦や学生のように所得のない人や生活保護を受けている人、前年の所得が一定金額以下の人などは非課税となっています。これは、所得金額にかかわらず定額で課税される「均等割」、前年の所得金額に応じて課税される「所得割」、預貯金の利子等に課税される「利子割」、一定の上場株式等の配当に課税される「配当割」、源泉徴収口座内の株式等の譲渡に課税される「株式等譲渡所得割」から構成されています。

なお、所得割と均等割については、1月1日現在でその地域に住んでいる方が課税の対象で、市区町村が「市町村民税」と「道府県民税」をあわせて徴収します。ここでは、身近な住民税の基本事項について見てみましょう。

■住民税の均等割と所得割は?
道府県民税も市町村民税も「均等割」と「所得割」との2つに区分されます。均等割は納税者に対して均等の額で課税され、所得割は課税所得金額に道府県民税または市町村民税の税率を掛け、それから税額控除をしたもので、これらを合算して道府県民税や市町村民税が計算されます。

所得割額=(前年の総所得金額等-所得控除額)×税率-税額控除額

■住民税の納税義務者は?
道府県内または市町村内に住所がある者は、住民税の均等割および所得割の納税義務者となり、道府県内または市町村内に事務所・事業所または家屋はあるものの住所がない者は、均等割だけの納税義務者となります。

■住民税の標準税率と制限税率は?
住民税の税率には、通常適用される「標準税率」と、道府県や市町村がそれぞれの実情に合わせて設定できる上限を示した「制限税率」とがあります。現在、総合課税分の標準税率は、都道府県が4%、市町村が6%で、合計10%となっています。

■東京都の住民税は?
東京都の特別区内については、地方自治法により特別の地位を与えられており、特別区内に住所のある個人が納める住民税は、道府県民税に相当する税は「都民税」として、また市町村民税に相当する税は「特別区民税」として課税されます。

■住民税の納付税額は?
各都道府県および各市町村は、サラリーマンやOLなどの勤務先などから提出された給与支払報告書や所得税の確定申告書に基づいて住民税額を計算し、各人へ通知します。また、住民税の納付方法は、「特別徴収」と「普通徴収」の2つがあります。

■特別徴収
給与所得者の方を対象とした納税方法で、市区町村から「特別徴収税額通知書」により給与の支払者(事業主=特別徴収義務者)を通じて税額12カ月分が本人に通知されます。また、給与の支払者は、通知された税額を6月から翌年5月まで、毎月の給与から天引きして納付します。

■普通徴収
事業所得者や公的年金所得者など給与から住民税を差し引くことができない方などを対象とした納税方法で、市区町村から送付される納付書で住民税を納めます。なお、年度当初の納税通知書は、毎年6月半ば頃に発送されます。



使途不明金と使途秘匿金の違い

■使途不明金と使途秘匿金の違いの概要

使途不明金とは、法人が支出した金銭でその使途が明らかでないもの、または法人が使途を明らかにしないものをいいます。

一方、使途秘匿金とは、使途不明金のように金銭の支出(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含む)のうち、相当な理由なく、相手方の氏名、名称等を帳簿書類に記載していないものをいいます。

この2つの違いは、法人の税負担に大きな違いがあります。
使途不明金は損金に算入されず所得に課税されるのに対して、使途秘匿金は全額損金不算入となるだけでなく、通常の法人税に加え、支出額の40%の追加課税が行われます。さらに地方税の負担を合わせると、支出額とほぼ同額に近い約9割の税金が課されることになります。
また、支出額が課税対象になるため、赤字法人でも納めなければなりませんので、非常に厳しい取扱いになります。

■使途不明金と使途秘匿金の違い
使途不明金とは、交際費、機密費等で金銭による支出をともなうもので、その支出内容がハッキリしないもの、要は会社として負担すべきものかどうか、会社の事業と関係があるかどうかも含めて支出目的が明確にならないものをいいます。会社は支出先や支出金額はわかっていますが、なんのための支出なのかが明確でないため、会社の経費で処理することができないものです。

一方、使途秘匿金は金銭による支出だけではなく、金銭以外の現物により支給する場合もあります。使途不明金とは違って、支出目的だけではなく支出した相手の名称や所在地すら帳簿等の記録に残さないことになりますので、違法性の性格をもつ支出ともいえます。


公証役場に行ってきました。

公証役場で公正証書を作る手順は、  1.電話予約    2.1回目の相談(無料)   3.2回目の相談(公正証書の交付=有料)  です。

 

1.電話予約

まず、電話で「死因贈与契約公正証書を作りたい」と言って、予約を取りました。電話での対応は、女性の受付担当の方でした。

 

2.1回目の相談(無料)

電話での予約の時に聞いた次の書類を準備しました。

1 印鑑証明書

2 登記簿謄本

3 評価証明書

ただし、印鑑証明書は6ヶ月を超えたもの、評価証明書は昨年度のものでしたが、1回目の相談の時は、これで、十分なようです。すべてコピーを取っておいて、お渡ししました。

そのほか、説明に便利なように

4 説明事項を書いた紙(親族関係図、現状、公正証書の作成理由、公正証書作成で注意すべき点(仮登記(始期付所有権移転仮登記)の執行者)、本登記の執行者)

5 贈与契約書

も、作成して持って行きました。これにより、スムーズに話ができたと思います。

 

公証人に会う1回目の今回は、私が、書類を見ながら15分ほど説明して、その日のうちに(30分ほど)公正証書の原案を作ってくれました。

その公正証書の原案で良いか確認してくださいとのことでした。

公証人が、書類を作成している時間も含めて、40分ぐらいで1回目の相談は終わりました。

 

次回、公証人に会う時に、下記の書類を持参して、正式な公正証書になります。

1 印鑑証明書(3ヶ月以内)

2 実印

3 評価証明書(現年度の分)

4 手数料(5000円+5000円で、1万円ぐらい)


印鑑証明を取ってきました。

印鑑登録証を持参して、交付申請書に、 登録している者の住所、氏名  が正確に書ければ、誰でも取得できるそうです。 妻に行ってもらえばよかったと思いました。


税金は、コストですか?

税金は、コストです。ですから、単に減らせば良いというものではありません。
コストである広告宣伝費を減らせば、売上が落ちます。コストである材料費をケチれば、製品の質が落ちて、消費者に買ってもらえなくなります。

税金だって、同じです。過度にケチれば(=過度に節税すれば)、手持ちの現金が少なくなり、資金繰りに苦しくなります。
また、過度に節税するより、税金を払っていた方が、銀行の信用力もあがり、融資も受けやすくなります。
もちろん、払いすぎる必要はありませんが、過度な節税は、お勧めいたしません。


納税は、憲法に定められた、国民の義務です。

でも、税金の計算は、とても難しい。

 


情報には、金銭的価値がありますか?

情報には、金銭的な価値があります。
わかりやすい例は、「今、あなたが、ある店で、1万円のものを買おうとしていました。その時、ある人が、『同じものが、隣の店で、9千円で売っていますよ。』と
情報を提供してくれました。その情報の価値は、1万円-9千円= 千円 の価値のある情報です。


お金の上手な貯め方、ご存じですか?

お金の貯める方法は、基本、3つの要素しかありません。

収入を増やす。

支出を削る。

資金(ストック)を運用する。

・リスク分散

・海外投資


歯の健康のため

1 食べたり、ジュースを飲んだ後は、すぐに、水で口をすすぐ。(外出時は、トイレの手洗いの水でも良いので、できるだけ早く、口をすすぐ。)

ジュースや(コーラ、フルーツジュースなど)は、酸性の度合いが高いので、そのまま放置すると、エナメル質やカルシウムでできた骨が溶けてしまいます。飲んだ後は、水で、必ず口をすすぎましょう。

2 歯ブラシは、食後30分後に。歯ブラシは柔らかいものを使う。優しく丁寧に。

3 週に2、3回は、歯間ブラシで、歯間及び歯と歯茎の間を綺麗にします。


今度、平塚信用金庫の創業応援セミナーに行こうと思っています。

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税務署というのは、どのようなところでしょうか?


国税庁は財務省内の一つの組織です。そして、、国税庁の下部組織として位置付けられるのが国税局及び税務署です。

法治国家である日本では、税務署の組織に関しても、法令の規定によってつくり上げられています。
財務省は財務省設置法に基づいて設けられ、国税庁はそのうちの一つの組織として設けられています。
そして、国税庁の内部組織は財務省組織令に基づいて決められ、国税局は国税庁の下部組織として設けられています。
さらに、地方支部部局として国税局及び税務署が財務省組織規則に基づいて設けられ、その内部組織が決められているというわけです。


■東京国税局の審理課の仕事


平日昼間だけでなく、平日夜間、土曜日昼、土曜日夜、日曜日昼、日曜日夜、祝日昼夜でも、対応可能です。

ただし、学会出席や、研修セミナー講師等の用事で、不在することも多いため、必ず、  頂ける時は、
事前に電話等で連絡頂けますよう、お願い致します。



今日は、国税徴収法でした。エッサムに行きました。

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相続(税)専門相談窓口

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(問)税理士って、何だと考えれば良いんですか?

「アウトソーシング」と考えるのが、わかりやすいと思います。 経理の職員を雇うと、人件費だけで、年数百万円かかります。
自分でやろうと思っても、いろいろ調べなければならないし、時間もかかり、結果にも自身が持てない。
税理士に頼めば、経理にかかる時間を、節約でき、ご自身の仕事に専念できます。
自分で、どうしてもやらなければならない仕事以外は、専門家に任せた方が、結局安上がりということです。

(問)税理士顧問料って、何ですか?

工事などは、数年に1回なので、工事を頼んだときに支払いをするのが、一般的です。
これに対し、経理は、毎月発生している仕事です。 ですので、毎月顧問料がかかります。
また、年に1回、申告書の作成だけをお願いしている方もいると思います。その場合の顧問料は、
年に1回支払いになると、その時に多額をお金を払うことになるので、分割払いと考えてもらえれば
わかりやすいと思います。

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税務訴訟資料 第254号-1(順号9508)
高松高等裁判所 平成15年(行コ)第23号 法人税課税処分取消請求控訴事件
国側当事者・松山税務署長
平成16年1月9日棄却・上告
判示事項
(1) 控訴人漁業組合が漁業振興協会に対し、同協会の基本財産とすることを指定した出捐金は、同協
会の基本財産に繰り入れられ、これを原資として行われた同協会の事業活動により、控訴人組合及び
控訴人の組合員の漁獲量及び漁獲高の増加という控訴人組合及び組合員のみに帰属する排他的専属
的利益がもたらされており、これが本件出捐金の対価であるから、寄附金ではなく、繰延資産に該当
するとの控訴人組合の主張が、振興協会は公益法人であり、同協会の事業活動は、あくまで公益、す
なわち社会全般の利益のために行われるものであり、本件出捐金も、この公益目的を遂行するための
財産的基礎を形成するものとして拠出されたものというべきであって、同協会の事業活動の成果の多
くを控訴人組合及び組合員が享受する関係にあるとしても、これはいわば反射的な効果に過ぎず、本
件出捐金の対価であるということはできないから、本件出捐金は寄附金に該当し、繰延資産には該当
しないとして排斥された事例(原審判決引用)
(2) 控訴人漁業組合が訴外会社等から受領した漁業協力金等は、その実体は、影響補償金、あるいは
漁業者たる組合員による操業への影響に対する補償等であり、その名目のいかんにかかわらず、各組
合員に帰属するものであるから、益金として計上することなく、仮受金として仮勘定経理することが
できるとの控訴人組合の主張が、①本件漁業協力金等は、個々の組合員の操業ではなく控訴人組合の
有する共同漁業権への影響ないし制約に対する補償と解すべきであること、②本件漁業協力金等は、
組合員に対する配分が当然に予定されるなど形式上控訴人組合が受領したに過ぎないものというこ
とはできず、控訴人組合が受領した段階で控訴人組合に確定的に帰属しているというべきことから、
これらを収受した各事業年度の益金の額に算入すべきものと認められるとして排斥された事例(原審
判決引用)
(3) 本件漁業協力金等の仮受金処理は、長年の慣行によって既に税務会計原則として確立されており、
昭和50年代初頭から平成8年度までの間、課税庁担当官の同席の下で実施された集合申告会におい
て、仮受金処理について確認した上で税務申告を行ってきたとの控訴人組合の主張が、課税庁職員に
よる指導はいずれも公式のものではなく、いわば控訴人組合ら漁業共同組合の便宜のため、事実上相
談に応じていたというものに過ぎないとみるのが相当であるから、当該取扱いが慣習法の域に達して
いたとは解し難く、租税法律主義の原則に照らしても、控訴人組合の主張は失当であるというべきで
あり、また、租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては、信義則ないし禁反言の法
理の適用については慎重でなければならないところ、上記事実をもって、課税庁としての公的な見解
が示されたものとはいえないことからすると、上記法理を適用する前提を欠くというべきである(最
高裁判所昭和62年10月30日第三小法廷判決・裁判集民事152号93ページ参照)として排斥
された事例(原審判決引用)
判決要旨
(1)~(3) 省略
(第一審・松山地方裁判所 平成12年(行ウ)第7号の2、平成14年(行ウ)第7号、平成15年
2
6月24日判決、本資料253号・順号9371)
判決
控訴人 A協同組合
同代表者代表理事 甲
同訴訟代理人弁護士 南 健夫
同 曽我部 吉正
被控訴人 松山税務署長
山西 靖彦
同指定代理人 片野 正樹
同 富﨑 能史
同 中川 義信
同 鈴木 久市
同 友澤 哲郎
同 倉本 幸芳
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人に対してした次の各処分をいずれも取り消す。
(1) 平成8年12月1日から平成9年11月30日までの事業年度の法人税について
平成10年6月29日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定処分のうち、寄附金
損金不算入額6147万4729円、繰延資産償却費の損金不算入額1240万円及
び雑収入の計上漏れ額898万円とした部分
(2) 平成9年12月1日から平成10年11月30日までの事業年度の法人税につい
て平成13年1月26日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定処分(平成14年
11月19日付け変更決定による一部減額後のもの)のうち、繰延資産償却費の損金
不算入額1240万円及び雑収入の計上漏れ額3786万4000円とした部分
(3) 平成10年12月1日から平成11年11月30日までの事業年度の法人税につ
いて平成13年1月26日付でした更正及び過少申告加算税賦課決定処分(平成13
年11月7日付け異議決定による一部取消後のもの)のうち、雑収入の計上漏れ額2
646万円とした部分
第2 事案の概要等及び争点
原判決の「事実及び理由」中、「第2 事案の概要等」及び「第3 争点」記載のとお
りであるから、これを引用する。
第3 当裁判所の判断
3
当裁判所も控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとお
り付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中「第4当裁判所の判断」記載のとおりで
あるから、これを引用する(ただし、3項を除く。)。
1 原判決14頁5行目の次に、改行の上、「なお、振興協会が施行令14条1項9号イ
の『共同的施設』に当たると解することもできない。」を加える。
2 原判決16頁17行目末尾の次に、改行の上、次のとおり加える。
「被控訴人は、「昭和63年1月ころ開催された総会で、漁業操業に悪影響を及ぼす事
業所、起業者等との被害補償の交渉について、被控訴人に対し、その補償交渉、妥結
及び補償金の受領等の一切の権限を委任するとの申し合わせがなされた。」旨主張し、
甲69を提出するが、この事実をもって、本件漁業協力金等の支払に関する個々の契
約ないし合意について、被控訴人が組合員を代理し、又は組合員の委任を受けてこれ
を行ったと認めることはできない。」
3 原判決18頁2行目末尾の次に、「なお、本件通達による取扱いは、国等の行う公共
事業の施行に伴う共同漁業権等の消滅又は価値の減少による補償金の支払を受ける場
合に限定して認められるものと解すべきである。」を加える。
第4 結論
以上のとおり、争点1及び争点2のいずれにおいても、控訴人の主張には理由がなく、
本件各処分の根拠のうち、これら以外の点については、当事者間に争いがないから、本件
各処分はいずれも適法であるというべきである。
よって、これと同旨の原判決は相当であり、本件控訴は理由がない。
高松高等裁判所第4部
裁判長裁判官 松本 信弘
裁判官 吉田 肇
裁判官 種村 好子

ーーーーーー税務訴訟資料 第254号-2(順号9509)
神戸地方裁判所 平成13年(ワ)第2276号 損害賠償請求事件
国側当事者・国
平成16年1月14日棄却・控訴
判示事項
(1) 国税職員らは、事前の通告なしに納税者宅を訪れ、玄関チャイムを押し、これに対し納税者らが
「どうぞ」と言ったことを奇貨として、納税者宅の玄関扉を自ら開けて玄関に侵入し、靴を脱ぎ、廊
下に足を踏み入れ、納税者の制止にもかかわらず、リビング入り口付近まで進入し、納税者の住居の
平穏及びプライバシー権を侵害したとの納税者の主張が、国税職員らが「どうぞ」の言葉で玄関内に
入ったことに違法性があるとまではいえないし、国税職員らが靴を脱いで廊下に上がろうとしたこと
は、「上がらしてもらいますね」と声をかけながらであっても、行き過ぎであるが、結果として上に
は上がっておらず、現実に廊下に上がりリビングに入ったのは、改めて納税者からの許可を得てから
後のことであり、リビングに入ってからの国税職員らの行動に、特に違法行為と目されるものはない
から、納税者宅における国税職員らの行動に損害賠償義務が生じる程の違法行為があったとはいえな
いとして排斥された事例
(2) 国税職員らは、納税者が代表者である訴外会社の本社事務所に行き、その取引先がいる前で、納
税者を恫喝するなどして罵倒し、納税者の人格、信用を害したとの納税者の主張が、国税職員が納税
者にお前などと言ったことが認定され、国税職員の発言は適当でないし、納税者から見れば若輩の国
税職員からお前呼ばわりされた納税者の怒りはそれなりに理解できるとしても、全体としてみれば、
国に金銭賠償を命じる程の違法性があるとまではいえないとして排斥された事例
(3) 国税職員らは、納税者が代表者である訴外会社の本社事務所において、同社が税務調査を受けて
いる事実及び同社の申告状況等について第三者の両前で暴露するなどして、法人税法163条(当該
職員の質問検査権)、所得税法243条によって税務職員に課されている守秘義務に違反したとの納
税者の主張が、本件税務調査につき、第三者がその場にいたことを認めるに足る確証はなく、仮に国
税職員らの言葉が第三者に聞こえていたとしても、その発言に至る経緯や発言内容からみて、守秘義
務違反を理由とする金銭賠償を命じる程の違法性があるとまではいえないと判断するのが相当であ
るとして排斥された事例
判決要旨
(1)~(3) 省略
判決
原告 甲
同訴訟代理人弁護士 高橋 敬
同 大搗 幸男
同 永井 光弘
同 辰己 裕規
同 柿沼 太一
被告 国
2
同代表者法務大臣 野沢 太三
同訴訟代理人 仁田 裕也
同 豊田 周司
同 久寶 嘉信
同 野中 哲己
同 井上 俊和
同 根来 実
同 山岡 尚子
同 篠崎 雅子
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告は、原告に対し、500万円及びこれに対する西暦2001年9月11日か
ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
(3) 仮執行宣言
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
(3) 担保を条件とする仮執行免脱宣言
第2 事案の概要
1 事案の骨子
本件は、原告宅及び原告が代表取締役会長である訴外株式会社A(以下A」という)
の本社に税務調査(以下、併せて「本件税務調査」という)のため訪れた大阪国税局職
員ら(以下「職員ら」という)の言動が不法行為に該当するとしてなされた、国家賠償
法1条1項に基づく損害賠償請求事件である。
2 原告の主張
(1) はじめに
被告は、国税局資料調査課が中心になって行ういわゆる「料調方式」と呼ばれる調
査を事前の通告なしに原告の自宅やA本社事務所(以下「本社」という)などで行い、
その際、①自宅への違法な侵入、②本社事務所での恫喝行為と守秘義務違反の違法行
為を行ったことにより、原告は精神的苦痛を受けたので、慰謝料として500万円を
請求する。
(2) 料調方式の特質
料調方式は、「調査による効果が大きいと予想されるもの」すなわち、納税者に対
3
するみせしめ的威嚇効果の大きいものから調査対象者を選び、事前通告なしに着手さ
れ.店舗、自宅、取引先等同時に組織的に行われるなど、任意捜査の名のもとに強制
捜査すれすれのことがなされており、かかる調査方法は脱法行為である。
(3) 原告の自宅での調査
ア 原告は住所地で妻と生活しているところ、重篤な頸椎障害により日常的に療養生
活者に等しい生活を送っており、自宅での静穏な生活がなにより求められている。
イ 被告職員は、平成13年9月11日午前9時頃、事前の通知をせずに原告宅に行
き、原告の許可を得ていないにもかかわらず、原告宅の玄関扉を自ら開けて玄関に
侵入し、靴を脱ぎ、廊下に足を踏み入れ、原告の制止にも関わらず、リビング入り
口付近まで進入し、原告の住居の平穏及びプライバシー権を侵害した。以下、詳述
する。
(ア) 原告は身体に障害があり1人で着衣脱衣ができない状態だったところ、平成
13年9月11日朝9時頃、原告が妻(以下単に「妻」あるいは「乙」という)
に手伝ってもらって下着のシャツを着替えていた。
(イ) その時、玄関チャイムが鳴り、リビングから玄関の網戸越しに、人が数人立
っているのが見えたので、原告と妻は何気なく同時に「どうぞ」と声をかけた
(ウ) ところが、その時点で扉の向こうにいた2名の男性(後に大阪国税局の職員
2名と判明、大阪国税局課税第二部資料調査第1課の丙主査と丁実査官で、以下
併せて「丙ら」といい、個別には「丙」「丁」という)は、突然自ら扉を開け、
玄関で靴を脱ぎ、いきなり原告宅に侵入してきた。彼らは「入らせてもらいます
よ」等の原告の承諾を求める言葉は一切発していない。
驚いた原告は、先頭の男(丙)が靴を脱ぎ片足を廊下に踏み入れた時点で、「誰
があがれと言うた!」と怒鳴った。
(エ) しかし、原告が怒鳴った後も、丙らは原告の制止を全く無視してどんどん家
の中に上がり込み、原告宅の廊下を進みリビング入り口付近まで、侵入してきた。
なお、原告は男たちが原告宅に侵入してきたのを見た瞬間から、その侵入を阻
止すべく、玄関へ向けて歩き始めていたが、前述のように身体障害のため杖をつ
いて歩行しなければならない状態だったので、ここまで丙らの侵入を許してしま
った。
(オ) 当然のことながら、原告は動転、激高し、リビングの入り口付近で丙らと激
しい口論となった。原告は丙らに対し「あんたら何者や」「勝手に家に踏み込む
のなら(家宅捜索)令状はもっているのか」と詰問した(原告供述8頁)。
丙らが国税局の者ですと言って名刺を差し出そうとしたが原告は受け取って
はいない。
(カ) 原告が、丙らと口論している間に、本社から電話があり、妻が受話器をとっ
て、本社にも国税が来ていることを伝えたので、原告は妻に対し「店には一歩も
入れるなと言つておけ」と言い、すぐに、妻に手伝ってもらって途中であった着
替えをすませ、すぐに本社へ向かった。その間、丙らは退去するわけでもなく、
じろじろと原告の着替えを見ていた
(キ) 原告が自宅を出たのは丙らとほぼ同時である。
4
ウ 以上が、9月11日に現実に生じた出来事であり、このように、原告らが「どう
ぞ」と一言言ったことを奇貨として、朝9時に突然2名の男が原告の私宅内に侵入
し、その私生活上の平穏、プライバシーを土足で踏みにじったのである。かかる行
為は国家機関としてとうてい許されるものではない。
(4) 本社での調査
ア 訴外戊(以下「戊」という。)らは、A本社事務所に行き、同所南入口付近とい
う、来社していた同社の取引先である株式会社BのCや同社の従業員に聞こえる場
所において、同日午前9時45分頃、原告に対して、「おまえ」「調査拒否するのか。
お寺や病院に調査に行くぞ。青色申告取り消すぞ。消費税の仕入れ控除も認めん
ぞ。」と脅し、原告の人格権・信用を侵害し、守秘義務に違反した。以下、詳述す
る。
(ア) 原告が、同日午前9時45分ころ、本社に着いたとき、本社内のガレージの
中に立ち入ってガレージに駐車しているAの取引先等の車両ナンバーを手帳に
控えていた人物がいた(後に戊という名前の被告職員であることが判明)。
(イ) そして、原告が本社の北側入り口から事務所内に入ったところ、本社事務所
南側入り口の玄関ドアをあけて3名の背広の男が入りこもうとしていた。
原告は事務所南側に向かって「どこへはいっとるんか。勝手に中へ入らんでく
れ」と叫びながら南側入り口のほうへ向かった。
原告が南側入口に近づくと、また3名の背広姿の者が入り口から入ろうとし、
そのうちの一人で先ほどの駐車場で車両ナンバーを手帳に控えていた戊が顔を
見るなり原告に向かって「おまえ!」と呼び捨て、「言うことを聞け!調査拒否
するのか!お寺や病院に調査に行くぞ!」「青色申告取り消すぞ!」「消費税の
仕入れ控除も認めんぞ!」などと脅しつけてきた。驚いた原告は自宅での乱暴、
狼籍を腹に据えかねていたこともあり、「行くならいかんかい。」と言い返した。
(ウ) そのとき、D主査(以下「D」という)と名乗る男が、今回の責任者だと名
乗ってきたので、原告は、一面識もない年長者である原告に対して「おまえ」な
ど呼び捨てにし、かつ不利益処分を口にしてさんざん営業者たる納税者を脅しつ
ける言動をした戊という大阪国税局の職員の言動や、そんな職員を連れてきたこ
とに抗議をして、「あんな乱暴な脅しをするものは、会社の中に入ってもらって
は困る」と、戊を退出させるよう求めた。しかしDは戊はDの係に入つているの
で、そんな事はできないと言い続け、全く原告のいうことに耳を傾けようとせず、
時間がすぎていった。
(エ) その後、Dは、戊を連れていったん本社南側入り口から外へ出たが、すぐ原
告の自宅に入り込んだ丁と本社事務所へ入って来て、調査をさせろと言い張った。
原告は丙らの自宅侵入といい、戊の脅しといい異常でひどすぎるとたしなめ、
原告の身体障害者手帳とたまたま手元にあった原告の症状の記載された診断書
を示して、身体の調子が悪い上こんなにひどいことを言われて今日は気分も優れ
ず身体的に調査を受けられる状況ではないので、調査なら明日にして出直してほ
しいと求めた。
(オ) その後、いったんはDだけが事務室内に入室し、午前11時過ぎころ、Aの
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取引先業者Cに「関係のない者は出て行け」といったところ、同人より反発され、
虚をつかれたのか、「それならまた。」と行って本社事務所から出て行った。
イ このように、第三者が多数出入りし、広さもわずか40㎡しかないワンフロアの
本社事務所において、Aの取引先であるCらがいる前で、被告職員戊らは原告に対
し「お前、国税職員には、質問検査権という権利があって、事業主は調査に協力せ
んと青色申告を取り消すことができるんや。反面調査で病院とかお寺にも行くぞ」
などと原告を恫喝するなどして原告を第三者の面前で罵倒し、原告の人格、信用を
害しただけでなく、原告が代表者であるAが税務調査を受けている事実、およびA
の申告状況等について第三者の面前で暴露するなどして、法人税法163条、所得
税法243条によって税務職員に課されている守秘義務に違反した。
戊が原告に「おまえ」と呼び捨て、数々の脅し文句を言ったことは、原告がDの
入室を認めながら、断固として戊の入室は拒否していることからも明らかである。
(5) 原告が上記(3)、(4)により受けた精神的苦痛を慰謝するには500万円を下らな
い。
(6) 丙ら、及び、戊は、大阪国税局の職員であり、上記(3)、(4)は、訴外株式会社A
に対する「料調方式」の税務調査の一環としての行為であるから、被告には国賠法1
条により原告が受けた損害を賠償すべき責任がある。
(7) よって、原告は、被告に対し、500万円及びこれに対する不法行為の日である
西暦2001年9月11日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損
害金の支払を求める。
3 被告の認否、反論
(1) はじめに
本件税務調査は、法人税法153条(当該職員の質問調査権)に基づき、大阪国税
局資料調査課の職員により行われた任意調査である。
本件では、①Aに対して約7年間税務調査が行われなかったことに加え、②売上高
が大幅に増加する一方で利益率が低く、過少申告の疑いが認められ、③さらに、Aは、
規模が大きく事業範囲が広範囲にわたる等、所轄税務署では十分な調査を行うことが
できず、実態把握に相当の時間を要すると見込まれたことから、資料調査課において
本件税務調査を実施したものである。
そして、本件税務調査が国賠法上「違法」にあたるか否かは、「料調方式」自体の
違法性を問題とするのではなく、個々の税務調査における具体的事情の下において、
税務職員にゆだねられた質問検査権行使の実施の細目についての裁量に濫用ないし
逸脱があるかという基準を用いて判断すべきであところ、以下に述べるとおり、被告
職員に違法な行為はない。
なお、本件税務調査では、事前の通知が行われていないが、これは、税務職員に委
ねられた合理的裁量の範囲内であり、事前通知をしなかったこと自体はなんら違法で
はない。
(2) 原告宅での調査
ア Aの国税調査に関し、丙らが、事前の通知をせずに、平成13年9月11日午前
9時ころ、原告宅に臨場し、玄関の扉を開けて玄関内に立ち入ったことは認めるが、
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原告の許可を得ていないことは否認する。
(ア) 丙らが原告宅の玄関前に到着したとき、玄関口のドアは開いていたが通風用
の扉が閉まっていたため、丙らは、インターホンを通じて話しかけ、扉を少し開
けて応答した妻らしき女性に身分証明書を提示して氏名を名乗り、「Aの調査に
伺いました。オーナーであられるご主人にお話をお伺いしたいのですが。」と用
件を伝えたところ、その女性(妻)はいったん通風用の扉を閉めて奥に入り、ソ
ファに座っていた原告と話をしていた。これを見た丙は、国税局の者がAの調査
で原告に会いに来たことを伝えているものと思った(なお、丙は妻がいったん扉
を閉めた後、扉の前で待機していたが、扉には通風用のすき間があることから、
普通に立った状態で扉の中の様子が視認できた)。
(イ) その後、しばらくして扉の奥から妻の声で、「どうぞ」と声がかかったが、
丙はどうすべきか思案していると、原告がソファから立ち上がり、「どうぞ」と
言いながら玄関に向かって歩いて来た。
(ウ) 丙は、原告及び妻から「どうぞ」と言われたものの、その発言が玄関内への
立入り許可を意味するのかが不明であったことから、扉の外から、「入らせても
らっていいですか」とその意味を確認したところ、扉の奥から原告の声で再度「ど
うぞ」と返答があった。このことから、丙は、玄関内への立入りを許可されたも
のと判断し、「入らせていただきますね」と再度声をかけた上で網戸を開け、丁
と共に玄関内に入った。
イ 丙らが靴を脱いで廊下に足を踏み入れたのは、リビングから玄関方向に歩いてき
た原告が、玄関側の廊下から1メートル付近の所で、丙と目が合った後、「どうぞ、
どうぞ」と言いながら、リビングの方へ向きを変えて歩き出そうとしたからであっ
て、原告の許可もないのに廊下に足を踏み入れたのではない。
また、丙らがリビング入り口付近まで進入したのは、丙が「近所に声が漏れます
ので中に入れて頂けませんか。」と言ったところ、原告が「上がれ。」と返答したか
らであって、原告が制止するにも関わらず進入したのではない。
(ア) 丙は、このような原告の言動から、リビングに入るよう招き入れられている
ものと思い、「上がらせてもらいますね。」と再度声をかけ、右足の靴を脱ぎかけ
たところ、突然、原告が振り向き、「誰が上がれ言うた。」と怒鳴り、丙らの目の
前まで歩いて来た。
(イ) これに対し、丙は、玄関内において、原告の言動から部屋に招き入れられて
いるものと思ったことや家の中には上がっていないことを丁重に説明した。しか
し、原告は、「どうぞと言うただけで靴を脱いで上がるやつがどこにおるんや。」
「国税局かなんか知らんけども、調査したいんやったら令状を持って来い。帰
れ。」などと言い、かなり興奮した様子であった。
(ウ) しかし、丙がAの調査で訪れたこと、Aの創業者でオーナーでもある原告に
話だけでも伺いたいので家の中に入れて欲しい旨を約5分間にわたり要請した
ところ、原告は少し落ち着いてき、さらに丙からの「近所に声が漏れますので中
にあげていただけませんか」との要請に対し、原告は「上がれ。」と言い、丙ら
をリビングに招き入れた。
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(エ) リビングに通された丙らは、応接セットで原告に対し、身分証明書を提示し
て名刺を渡し、Aの調査で訪れた旨来意を告げるとともに調査への協力を要請し、
原告に対し、会社への関与状況等を質問したところ、原告から、社長はE(以下、
「E社長」という。)であり、自分自身は会長であること、原告は体調を崩した
ため5年近く会社の経営に関与していないこと、原告は頚椎の病気で手術をし、
平成12年9月から約7か月入院していたこと、障害の2級であること等を聴取
するとともに、障害者手帳を提示された。その後、丙は、原告に対し、創業者で
ある原告から話を聞きたいことを説明し、再度調査への協力を要請したが、原告
は、「協力しても何も得になることはない。」、「事前に連絡するのがルールや。」、
「どうしても調査したかったら令状を持って来い。」などと申し立て、丙の要請
を聞き入れなかった。
その後も、丙は、原告に対し、再三調査協力を要請するも、原告は同様の申立
てを繰り返すのみで、調査に応じる様子はなかった。
(オ) 同日午前9時30分ころ、それまで上記やり取りを聞いていた妻が、「そや
そや、電話がかかってきてたわ。事務所にも行かれてるんやね。」と言って電話
機の所へ行ったとたん、原告は、再度興奮し、「お前ら人を犯罪者扱いするんか」、
「わしをここに閉じ込めて一斉に踏み込むとはどういうことや。」などと怒り出
した。
これに対し、丙は、Aの調査を行うために同社の代表取締役会長である原告の
居宅を訪れたこと及び原告宅以外にA本社、湊町(兵庫)支店及びE社長宅にも
国税局職員らが臨場していることを説明した。
すると、原告は、妻に電話(子機)を持って来させ、どこか3か所に電話をか
け、「税務署が行っとるやろ、中へ入れるな、外へ追い出せ。」、「湊町にもそう伝
えておけ。」などと話した。
そして、原告が着替えを済ませ、外出しようとしていたことから、丙らは、こ
れ以上の説得は無理と判断し、原告及び妻に対して退出の挨拶をした後、午前9
時45分ころ、原告宅を退去した。
(3) 本社での調査
ア 戊がA本社事務所に行ったことは認めるが、戊が原告に対して「おまえ」と言っ
たこと、戊が、原告に対し、取引先等第三者のいる前で、「おまえ」「調査拒否する
のか。お寺や病院に調査に行くぞ。青色申告取り消すぞ。消費税の仕入れ控除も認
めんぞ。」と脅しをかけたことは否認する。
イ 戊は、脅したのではなく、「調査を拒否されましたら、青色申告の取消や、更生
処分、また消費税の仕入税額控除が認められなくなる。」「そういうことはしたくあ
りませんので、調査へのご協力をお願いします。」と、調査協力を要請したのであ
る。
ウ また、この調査協力の要請は、取引先等第三者のいる前で行ってはいない。Dが
本社に臨場した時点では、事務室内に同社の従業員以外の者は存在せず、また、D
が調査協力要請を行っている間は、同社の取引先らしき男性が2名訪れたが、その
際には、Dは原告の了解を得て事務室の外で待機していたのである。
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エ 具体的なやりとりは以下のとおりである。
(ア) 平成13年9月11日午前9時ころ、大阪国税局課税第二部資料調査第1課
のD及び戊は、Aの国税調査を行うため、本社に臨場し、玄関内に入った。Dら
は、玄関内において、E社長に対し、身分証明書を提示するとともにAの調査で
赴いた旨来意を告げたところ、E社長は、原告でなければ分からないと申し立て、
原告宅に電話をかけた。
しかしながら、電話はつながったものの原告自身が電話口に出た様子はなかっ
たことから、Dらは、原告が電話口に出たときの対応に備え、その後も玄関内で
待機した。
すると、女性従業員から、「甲会長から2度電話があって、国税を外に出して
おけと言われた。」と言われるとともに、E社長からも「甲会長は言い出したら
聞かないところがある」、「お願いですから外で待っておいてください。」との申
出があったことから、Dらは、事務室付近の路上で待機した。
(イ) 同日午前10時5分ころ、原告が車で本社に出社したことから、Dらは、待
機場所から駐車場の方へ向かい、事務室横の倉庫入り口前において、原告に対し、
Aの法人税等の調査で訪れた旨を告げ、身分証明書を提示するとともに名刺を渡
そうとした。しかしながら、原告はそれを無視し、令状がないことを確認すると、
「それなら帰れ。」などと申し立てて歩き出し、倉庫から事務室内に入ろうとし
た。
これを見た戊は、原告に対し、「調査でお伺いしましたのでご協力をお願いし
ます。」と調査への協力を求めたが、原告は、「そんなん知らん。ええか、一歩も
敷地に入るなよ。一歩でも入ったら訴えるぞ。」と倉庫の入り口を指さしながら
大声で申し立て、倉庫を通り、事務所北側入り口の方へ歩いて行った。
Dらは、事務所南側入り口に回り、扉を開け、外から事務室内にいた原告に対
し、「とりあえず、お話だけでもお願いします。」と更なる調査協力要請を行った
が、原告はかなり興奮しており、「調査は受けん。」「話なんかない。」「一歩も入
んな。」と言うなど、全く話を聞く様子はなく、調査に応じなかった。
なお、戊は、原告と顔を合わせた時からこれまでのやり取りの間において、原
告に対し、「おまえ」と呼び捨てにした事実は一切ない。
(ウ) その後も、Dらは、原告に対し、再三調査協力要請を行うも、状況は変わら
ず、原告が調査に応じる様子がうかがえないことから、Dが、調査拒否の理由を
尋ねたところ、原告は、「前もっての連絡がないからや。」と事前通知のないこと
が原因である旨回答した。
これを聞いた戊は、原告に対し、事前通知のないことが調査拒否の理由にはな
らないと説明したところ、原告は、「そんなんおまえに言われることはない。」
「裁判所で争う。」と申し立て、戊の事前通知のないことが調査拒否の理由にな
らないとの裁判例がある旨の説明とさらなる調査協力の要請に対し、「理由なん
かどうでもいい。」「それやったら、おまえの顔が気にくわんからや。」「おまえ何
言ってるねん。」「調査なんか受けん。」「さっさと帰れ。」と言うのみで、調査に
応じる様子は全くなかった。
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(エ) このように、原告は、Dらの調査協力要請に全く応じなかったことから、戊
は、「調査を拒否されましたら、青色申告の取消しや、更正処分、また消費税の
仕入税額控除が認められなくなる。」、「そういうことはしたくありませんので、
調査へのご協力をお願いします。」と調査協力が得られない場合に想定される課
税処理等を説明し、調査への協力を要請した。
しかし、原告は、「青色申告の取消しでも更正でも好きにしたらいい。」「おま
え、何偉そうにしゃべってるねん、もうええ、おまえとはしゃべることはない。」
「おまえの顔は二度と見たくない。」と言い、戊の要請を全く聞き入れようとし
なかった。
ところが、原告は、その後、Dから、重ねて調査への協力を要請されると、D
のみとなら話をすると申し出、事務室内の応接席で、Dに対し、事前通知は社会
の常識であること、調査をしたいのであれば令状を持参すべきであることなどを
申し述べた。
(オ) その後、その日の午後3時頃、Dが、提示してほしい帳簿を説明するために
明日午後2時に臨場したい旨申し出たところ、原告はこれを了承するとともに、
帳簿はFに預けている旨述べたことから、取り寄せを依頼し、また、明日はテー
プレコーダーのない状態で調査したい旨要請したところ、原告は、「今日の分も
目の前で消したる。」と述べた。
午後3時10分頃、Dらは事務室を退室した。
第3 判断
1 前提となる事実関係
(1) 原告宅での調査
ア 平成13年9月11日午前9時ころ、丙らが事前の通告なしに原告宅を訪れ、チ
ャイムを押したこと、これに対し原告と妻が「どうぞ」と答えたことは当事者間に
争いがない。
イ これに応じて、丙は、招き入れられているとして、「あがらしてもらいますね」
と言って右足の靴を脱ぎかけた途端、原告は「誰が上がれと言った」とかなり興奮
して怒鳴った、なお、丁は丙の後ろに立っていた(証人丙7頁、原告本人6頁)。
この点につき、被告は、原告からの「どうぞ」の応答は最初の1回だけではなく、
改めての「入らせてもらってもいいですか」の問いかけに対し再度「どうぞ」との
答えがあり、玄関で丙と目があった原告から「どうぞ、どうぞ」という言葉があっ
たので廊下に上がった旨主張する。しかしながら、そのように何度も「どうぞ」と
言いながら突然「誰が上がれというた」と怒鳴るのはいかにも不自然であるし、丙
証言によってもそのように何度も原告から「どうぞ」の言葉があったとは認められ
ず、この点に関する被告の主張は採用できない。
ウ 原告から怒鳴られた丙らは、原告が「どうぞ」と言ったこと、まだ上がっていな
いことを説明し、「どうぞと言っただけで靴を脱いで上がろうとするやつがどこに
おるんや、国税局かなんか知らんけども、調査をしたいんやったら令状もってこい」
という原告に、丙らが立った状況で、約5分位、調査に応じてもらうよう話をした。
この点につき、原告は、靴を脱いで上がりかけた丙らを見て、「誰が上がれとい
10
うた」と怒鳴ったが、丙らはそのまま上がってきた旨主張する。しかしながら、怒
鳴られたのにそれにかまわず中に入ってくるのも通常考え難く、その場に立って説
明したとの丙の証言を採用する。
エ 原告はかなり怒っていたが、段々怒りも収まり、また、丙の「通風性のサッシで
は声が外にもれるし、マンションでは響くから中に入れて欲しいとの要請があった
ので、原告は「あがれ」と言って丙らをリビングに入れた。
オ リビング内では、調査に応じて欲しいと言う丙らと、おまえら何者や協力しても
何も得になることはないと相当きつい言葉で応じる原告とのやりとりが続いてい
たとき、本社から電話があって、原告は本社に行くことになり、丙らはこれ以上話
を聞くのは無理と判断して原告宅を去った(丙らが原告と話をしている最中に本社
から原告宅に電話があったことは、原告宅に電話をかけたE社長の「向こうの方で
ギャンギャンやっておりますわ」という発言(証人戊4頁)から窺える)。
カ 丙らは、勝手に家の中の何かを調べたりするようなことはしておらず(原告本人
28頁)、その他何らかの調査行為もなされていない。
(2) 本社での調査
ア 原告宅から本社に着いた原告は、ガレージ内で駐車車両のナンバーを控えていた
戊を見つけ、相当きつく、「誰の許可を得てここへ入っておるんや」と問いつめた
(原告本人17頁、30頁)。
イ 次いで、原告は北側から本社事務所に入ったとき、南側玄関から入ろうとする被
告職員を見つけ、「誰の許可を得て入ってきよんねん」と言いながら南側玄関の方
に向かったところ、戊が「おまえ、調査を拒否するのか」などと言ってきた。原告
は、一番の若造のくせに、という思いと、自分の子供位の戊からおまえと言われた
ことに対し、憤懣やるかたなく、戊と大声で口論になった(原告本人20頁、30
頁)。戊がおまえと、いったことは、その後原告が戊だけは許せないとしているこ
とや、原告の供述の迫真性から見て信用できる。
ウ 戊が原告に対しお前と言ったりしたのは、突然何の脈絡もなしに出た言葉ではな
く、その前にガレージで原告から相当きつい言葉を言われたからである(原告本人
30頁)。
エ 被告職員らが、調査に応じるよう原告とやりとりをしていたとき、第三者がその
場にいたことを認めるに足る確証はない。
2 評価
(1) 原告宅での調査
ア まず、玄関内に入った点であるが、「どうぞ」の言葉で玄関内に入ったことに違
法性があるとまではいえない。
ただし、靴を脱いで廊下に上がろうとしたことは、「上がらしてもらいますね」
と声をかけながらであっても、行き過ぎで、上がることの明確な許可を得てからに
すべきであるといえる。
しかしながら、結果的には、丙らは上がる前に原告に制止され、結果として上に
は上がっておらず、現実に廊下に上がりリビングに入ったのは、改めて原告からの
許可を得てから後のことである。
【判示(1)】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

判示事項
(1) 税務調査と犯則調査との関係(原審判決引用)
(2) 課税庁係官による査察部の犯則調査への協力は適正手続を保証した憲法に反して許されず、課税
庁は、右犯則調査によって得られた資料の引継ぎを受けて、本件賦課決定処分をしたものであるから、
同処分は違憲、違法であるとの控訴人会社らの主張が、課税庁係官が控訴人会社らに対して行使した
質問検査権は、犯罪調査若しくは犯罪捜査のための手段として行使されたものとはいえず、課税庁係
官らの行為に違法な点はないとして排斥された事例(原審判決引用)
(3) 課税庁係官は質問調査を犯則調査に利用したものと評価することができ、その行為は、税務調査
と犯則調査を峻別している憲法31条(生命及び自由の保障と科刑の制約)、35条(侵入、捜索及
び拘束の制約)、38条(自白強要の禁止と自白の証拠能力の限界)に反し、違法であるとの控訴人
会社の主張が、査察部としては、独自の査察調査により、すでに控訴人会社を嫌疑者とする臨検・捜
索・差押許可状を請求できるだけの資料を収集していたと認められるから、上記臨検・捜索・差押許
可状の請求に際し、課税庁係官から送付された一部の資料を利用したことがあったとしても、質問調
査を犯則調査に利用したものと評価することはできないし、課税庁係官が査察部に対して「片面的」
な協力、加功の意思によって協力したということもできないとして排斥された事例
(4) 査察部は、課税庁係官が税務調査によって得た資料を疎明資料として、控訴人会社を嫌疑者とす
る臨検・捜索・差押許可状の発付を得たものであるから、違憲、違法であるとの控訴人会社の主張が、
査察部が同許可状の発付を得るに当たり、一部の資料を除き、課税庁係官が税務調査によって得た資
料を疎名資料としたと認めるに足りる証拠はないとして排斥された事例
(5) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)の趣旨
(6) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)の適用要件に関する主張立証責任
(7) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)にいう「調査」の範囲
(8) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)にいう「調査」と国税犯則取締法に基づく犯罪調査、
内偵調査との関係
(9) 更正予知の判断の基準時
(10) 控訴人会社の代表者らは、どこまでその具体的な内容を把握していたかはともかく、査察による
内偵調査が行われていること自体は間違いないものと認識し、知人から修正申告をすれば助かると言
われて修正申告をするとの決意に至ったものということができるから、その決意は主観的には、「調
査があったことにより更正があるべきことを予知してされたもの」であるとされた事例
(11) 国税局査察部は、平成6年2月ころないしは遅くとも3月ころには、控訴人会社らについて、脱
税が行われているとの疑いを抱き、内偵調査を始めており、控訴人会社の代表者らは、遅くとも税理
士に正式に修正申告を依頼した平成6月4月9日の段階では、控訴人会社らを対象として査察部によ
る内偵調査が行われていること自体は間違いないものと認識し、知人から修正申告をすれば助かると
言われて修正申告をするとの決意に至ったものということができるから、「調査があったことにより
2
更正があるべきことを予知してされたもの」に該当するとされた事例
(12) 内偵調査も国税通則法65条5項(過少申告加算税)にいう「調査」に含まれると解する場合に
は、内偵調査として客観的にいかなる調査が行われたのか、その調査がいかなる事情で更正の予知に
結びついたのかという点について、課税庁に具体的に主張立証させることが必要であり、そうでなけ
れば、内偵調査の存在と更正の予知との結びつきの主張立証が曖昧なまま、納税者に不利益に扱うも
のであって不公平であり、法的安定性と予測可能性をないがしろにするものであるとの控訴人会社の
主張が、内定調査として客観的にいかなる調査が行われたのか、その調査がいかなる事情で更正の予
知に結びついたのか、という点について、課税庁に具体的に主張立証させなければ、不公正であると
か、法的安定性と予測可能性をないがしろにするものであるとはいえないとして排斥された事例
(13) 課税庁が修正申告を受け付ける旨の見解を表明し、係官を控訴人会社らの事務所に訪問させ、過
少申告に関する帳簿類も提出させておきながら、これによって収集した資料を基礎に重加算税を賦課
することは、信義則違反であるとの控訴人会社らの主張が、信義則違反を理由として課税処分を取消
すことができる場合というのは、当該課税処分にかかる課税を免れしめて、なお、納税者の信頼を保
護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に、初めて右法理が適用されると
いうべきであり、そして、右特別の事情が存するとかどうかの判断にあっては、少なくとも、税務官
庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示し、納税者がその表示を信頼して、その信頼に基
づいて行動したのに、後になって、右表示に反する課税処分がされ、そのために納税者が経済的不利
益を受けることになったものであるかどうか、納税者が税務官庁の右表示を信頼してその信頼に基づ
いて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうかなどについての考慮が必要
となる(最高裁判所昭和63年10月30日第三小法廷判決・訟務月報34号853頁参照)ところ、
本件において、課税庁等が納税者である控訴人会社らに対して、信頼の対象となる公的見解を示した
との事実はないとして排斥された事例
判決要旨
(1) 税務調査と犯則調査は、調査の目的、手続、組織上の権限等を異にしており、税務調査における
質問検査権を犯則調査若しくは犯罪捜査のための手段として行使することは許されていない(法人税
法156条等参照)のであるが、法人税法156条等の規定は、税務調査中に犯則事件が探知された
場合に、その税務調査を端緒として、収税官吏による犯則事件の調査に移行することも禁ずる趣旨と
は解されない(最高裁判所昭和51年7月9日第二小法廷判決・最高裁判所裁判集(刑事)201号
137頁)。
(2)~(4) 省略
(5) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)は、過少申告加算税及び重加算税が納税申告秩序を維
持し、適正な納税申告を期待するための行政制裁であることにかんがみ、課税庁において先になされ
た申告が過少申告であることを認識する以前に、納税者が自発的に先の申告が過少申告であることを
認め、新たに適正な修正申告書を提出した場合には、例外的に過少申告加算税等を賦課しないことと
し、もって、納税者の自主的、自発的な修正申告を奨励することを目的とするものと解される。
(6) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)の規定の趣旨・体裁にかんがみれば、同規定の適用要
件に関する主張立証責任は、同規定の適用を求める納税者側にあるというべきであるが、同規定は、
「その申告に係る国税についての調査があったこと」を前提とし、これにより納税者が当該国税につ
いて更正があるべきことを予知したものでないかどうかを問題にしているのであって、そのような
「調査」が行われていない場合の修正申告書の提出については、当該納税者の主観的認識を問うまで
3
もなく同規定が適用されると解されるから、納税者が「調査」の不存在についても主張立証責任を負
うと解することはできず、その存在が立証されない限り同規定の適用があるという意味で、「調査」
があったことの主張立証責任が課税庁側にあるというべきである。
(7) 国税通則法65条5項(過少申告加算税)にいう「調査」とは、その趣旨にかんがみると、当然、
これにより納税者において更正があるべきことを予知し得るものであることを予定しているものと
解されるから、机上調査(主として納税申告書の精査等)や準備調査(主として実地調査の対象者の
選定)などの外部から認識するこのできない税務官庁内部の調査、検討の手続は、原則として、含ま
ないと解するのが相当であり、また、納税者を特定しない一般調査や課税に関する基礎資料の収集な
どを含まないことは、本件規定が「その申告に係る国税についての調査」と規定していることによっ
て明らかである。
(8) 国税犯則取締法に基づく犯則調査や内偵調査は、納税者に対する告発等を行うことを目的とする
ものであって、それ自体は更正等の課税処分を行うことを目的とするものではないが、犯則調査によ
り収集された資料を課税庁が課税処分を行うために利用することも許されるから、納税者とすれば、
犯則調査が行われれば、やがて更正に至るであろうことは予知できるという関係にあり、したがって、
国税通則法65条5項(過少申告加算税)の趣旨に照らすと、犯則調査や内偵調査は、更正等の課税
処分を行うことを目的とするものではないからといって、同規定にいう「調査」に当たらないとする
ことはできない。
(9) 更正予知の有無の判断の基準時は、原則的には、修正申告書の提出時点とすべきであるが、修正
申告を予定して、これに先だって、課税庁に対して真に自発的な修正申告の確定的な意思表明を行っ
ていたような場合には、修正申告の確定的な決意表明以後に行われた調査によって修正申告書を提出
したものであることが明白であったとしても、これに先立ってなされた課税庁に対する修正申告の確
定的な決意表明の時点を基準時として、その決意表明がそれ以前に調査があったことによって更正が
あるべきことを予知してされたものでないかどうかを判断すべきである。
(10)~(13) 省略
(第一審・松山地方裁判所 平成8年(行ウ)第6号、平成13年4月18日判決、本資料250号・
順号8886)
判決
控訴人 A株式会社
同代表者代表取締役 甲
控訴人 B株式会社
同代表者代表取締役 乙
上記2名訴訟代理人弁護士 高田 義之
松本 恒雄
東 俊一
中川 創太
被控訴人 今治税務署長
安藤 征郎
同指定代理人 横山 和可子
小松 一利
4
富﨑 能史
中川 義信
友澤 哲郎
鈴木 久市
倉本 幸芳
主文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が、平成7年5月22日付けで控訴人A株式会社に対してした下記の各賦課
決定処分を取り消す。
(1) 平成元年8月1日から平成2年7月31日までの事業年度(平成2年7月期)の
法人税の重加算税 1197万3500円
(2) 平成2年8月1日から平成3年7月31日までの事業年度(平成3年7月期)の
法人税及び法人臨時特別税の各重加算税
ア 法人税 2118万8000円
イ 法人臨時特別税 50万4000円
(3) 平成3年8月1日から平成4年7月31日までの事業年度(平成4年7月期)の
法人税及び法人特別税の各重加算税
ア 法人税 2592万1000円
ただし、2389万1000円を超える部分を除く。
イ 法人特別税 61万9500円
ただし、59万5000円を超える部分を除く。
(4) 平成元年8月1日から平成2年7月31日までを課税期間とする消費税の重加算
税 86万1000円
(5) 平成2年8月1日から平成3年7月31日までを課税期間とする消費税の重加算
税 20万0000円
(6) 平成3年8月1日から平成4年7月31日までを課税期間とする消費税の重加算
税 210万7000円
ただし、203万7000円を超える部分を除く。
3 被控訴人が、平成7年5月22日付けで控訴人B株式会社に対してした下記の各賦課
決定処分を取り消す。
(1) 平成2年2月1日から平成3年1月31日までの事業年度(平成3年1月期)の
法人税の重加算税 1585万1500円
(2) 平成3年2月1日から平成4年1月31日までの事業年度(平成4年1月期)の
法人税及び法人臨時特別税の各重加算税
5
ア 法人税 2406万6000円
イ 法人臨時特別税 57万4000円
(3) 平成5年2月1日から平成6年1月31日までの事業年度(平成6年1月期)の
法人税の過少申告加算税及び重加算税
ア 過少申告加算税 4万8000円
ただし、2万7000円を超える部分を除く。
イ 重加算税 135万1000円
ただし、22万4000円を超える部分を除く。
(4) 平成2年2月1日から平成3年1月31日までを課税期間とする消費税の重加算
税 9万1000円
ただし、8万7500円を超える部分を除く。
(5) 平成3年2月1日から平成4年1月31日までを課税期間とする消費税の重加算
税 31万8500円
ただし、30万4500円を超える部分を除く。
第2 事案の概要
被控訴人は、いずれも平成7年5月22日付けで、控訴人らに対し前記第1の2及び3
記載のとおりの法人税、法人臨時特別税、法人特別税及び消費税に係る重加算税又は過少
申告加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)をした。控訴人らは、①本件賦課決定処
分は、違憲、違法に収集された資料に基づいてされたものであるから、違法である、②控
訴人らの修正申告は、国税通則法68条1項、65条5項(以下「本件規定」という。)
所定の「調査があったことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされた
ものでないとき」に当たるから、加算税を賦課することはできない、③本件賦課決定処分
は信義則に反すると主張して、その取消しを求めた(なお、正確には、控訴人A株式会社
の平成3年7月期の確定申告は期限後申告であるから〔甲11号証の3〕、その修正申告
は期限後申告に係る修正申告であり〔国税通則法66条1項2号〕、適用が問題となるの
は同法68条2項、66条3項であるが、その規定の仕方は本件規定と同じであるので、
本件規定について検討すれば足りる。)。
原審は、控訴人らの本訴請求をいずれも棄却した。そこで、控訴人らが前記第1の1な
いし3記載のとおりの判決を求めて控訴した。
1 前提となる事実並びに争点及び争点に対する当事者の主張についての原判決の引用
(1) 前提となる事実(当事者間に争いのない事実、甲15、37、44、45号証に
より認められる事実及び記録上明らかな事実)
次のアないしエのとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第二の二の1ない
し11(9頁4行目から14頁10行目まで)記載のとおりであるから、これを引用
する。
ア 原判決9頁4行目から10行目までを次のとおり改める。
「1 控訴人A株式会社(以下『控訴人A』という。)の代表取締役は、従前は訴
外丙(以下『丙』という。)1人であったが、平成6年2月28日には甲(以下『甲』
という。)も代表取締役に就任し、丙が退任した平成7年1月20日以降は甲1人
である。控訴人B株式会社(以下『控訴人B』という。)の代表取締役は、甲の夫
6
である乙(以下『乙』という。)である。
控訴人らは、いずれも砂利採取を業とする同族会社であり、本社事務所を同一場
所に置き、その実質的な経営は、両社とも乙が行っている。」
イ 同末行の「原告A」から10頁1行目の「平成4年1月期の各事業年度」までを
次のとおり改める。
「控訴人Aは平成2年7月期(平成元年8月1日から平成2年7月31日まで)、
平成3年7月期(平成2年8月1日から平成3年7月31日まで)、平成4年7月
期(平成3年8月1日から平成4年7月31日まで)の各事業年度の、控訴人Bは
平成3年1月期(平成2年2月1日から平成3年1月31日まで)、平成4年1月
期(平成3年2月1日から平成4年1月31日まで)の各事業年度」
ウ 同11頁8行目中の「統括」をいずれも「総括」に改める。
エ 同12頁2行目の「発布」を「発付」に改める。
(2) 争点及び争点に対する当事者の主張
次のアないしオのとおり補正するほか、原判決「事実及び理由」第三の一ないし三
(15頁1行目から48頁7行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 引用部分中に「本条項」とあるのをいずれも「本件規定」に改める。
イ 原判決15頁1行目の「本件課税処分」を「本件賦課決定処分」に改める。
ウ 同20頁3行目の「確定申告」を「修正申告」に改める。
エ 同26頁9行目から10行目の「説明したものた」を「説明したもの」に改める。
オ 同29頁1行目の「更正あるべきこと」を「更正があるべきこと」に改める。
2 争点一(本件賦課決定処分のための資料収集手続に違憲、違法な点はあるか。)に関
する当事者の当審補足主張
【控訴人ら】
(1) 今治税務署の辛統括調査官が、平成6年4月12日、己調査官らを控訴人ら事務
所に派遣した際、調査結果いかんによっては査察事案で処理することが妥当であると
考え、調査内容や入手資料を査察部の犯則調査のために提供する可能性ないし方針の
もとに調査を指示し、現実にその日のうちに、己調査官らが税務調査によって得た情
報及び資料を右から左へ査察部に提供した点をみれば、質問調査を犯則調査に利用し
たものと評価することができ、辛統括調査官の行為は、税務調査と犯則調査を峻別し
ている憲法31条、35条、38条に反し、違法であることが明らかである。
このような辛統括調査官を含む今治税務署の査察部に対する協力行為は、査察部と
の事前の通謀ないし意思連絡が立証されないからといって、その違憲性が解消される
わけではない。いわば今治税務署の「片面的」な協力、加功の意思による場合も、同
様に違憲、違法となるのである。
そして、査察部は、今治税務署職員が税務調査によって得た資料を疎明資料として、
同月13日に高松簡易裁判所裁判官から控訴人Aを嫌疑者とする臨検・捜索・差押許
可状の発付を得たものであるから、違憲、違法である。
(2) 以上のような違法な行為によって収集された資料に基づいてされた本件賦課決定
処分は違法である。
【被控訴人】
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(1) 本件税務調査は、控訴人らの法人税等調査を目的として行われたものであって、
犯則調査又は犯罪捜査に「片面的」に協力することを目的としたものではない。
辛統括調査官が査察部への通報を決意したのは、己調査官らから調査結果の復命を
受けた後のことであって、控訴人ら主張のように、己調査官らを控訴人ら事務所に派
遣した際、調査結果いかんによっては調査内容や入手資料を査察部の犯則調査のため
に提供する可能性ないし方針のもとに調査を指示した、というわけではない。
(2) 査察部が、平成6年4月13日高松簡易裁判所裁判官に臨検・捜索・差押許可状
の発付を請求するに際し、今治税務署の調査担当官が控訴人らから受領し、辛統括調
査官が査察部にファクシミリで送信してきた資料の一部を、金融機関1か所に対する
同許可状請求の疎明資料として添付したことは認める。
3 争点二(控訴人らの修正申告が、本件規定にいう「調査があったことにより当該国税
について更正があるべきことを予知してされたものでないとき」に該当するか。)に関
する当事者の当審補足主張
【控訴人ら】
(1) 本件規定の立法趣旨
本件規定の立法趣旨は、自発的な修正申告を奨励して能率的な課税を実現するとい
う行政目的を実現すること、国が調査の手間をかけることなく徴税目的を達成するこ
とができることにある(東京高裁昭和61年6月23日判決・行裁集32巻7号10
56頁〔以下「昭和61年東京高裁判決」という。〕)。したがって、本件規定は、「調
査」が先行した場合を前提とし、たとえ調査が先行していてもそれが更正の予知と結
びつかない状態で納税者が修正申告書を提出した場合には、過少申告を意図してこれ
を大規模に実行した者と、悪意なく単なる法令の誤解で過少申告をしてしまった者と
を区別することなく、加算税を課さないこととしたものである。徴税目的の能率性の
確保や調査の手間の省略という観点からすると、前者の事例の救済を軽視することは
明らかに失当である。修正申告をすることを決意した動機が倫理的なものであれ、存
否が不明確で実体の不確かな調査の影におびえたものであれ、国が手間をかけること
なく徴税目的の実現を図ることができることに変わりはない。
(2) 査察部による内偵調査と本件規定にいう「調査」
ア 本件規定にいう「調査」の意義についての課税行政に従事する租税実務家の解釈
(例えば、品川芳宣「附帯税の事例研究」、池本征男「申告納税制度の理念とその
仕組み」ほか)、国税庁通達(平成12年7月3日付け国税局長・沖縄国税事務所
長宛国税庁長官「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて〔事
務運営指針〕」〔甲96。以下「国税庁事務運営指針」という。〕)、裁決例で示され
た解釈が一定の共通した内容をもって繰り返し公表されており、その共通した内容
(本件規定の「行政解釈」ということができる。)は、以下のとおりである。すな
わち、一般に税務調査とは、課税標準等を認定するに至る一連の判断過程の一切を
意味するものであって、納税者本人やその取引先に対する外部調査のほか、机上調
査等の準備調査も含む概念である。しかし、本件規定にいう「調査」とは、規定の
体裁上、「調査があったこと」と「更正の予知」が結びつく関係にあるから、外部
から認識し得る具体的調査、例えば実地調査や面接調査、納税者に対する臨場調査、
8
取引先の反面調査などを指すものと解すべきである(ただし、臨場のための日時の
連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として、「更正がある
べきことを予知してされたもの」に該当しない〔国税庁事務運営指針〕。)。したが
って、机上調査や準備調査のような外部からは認識することのできない調査や税務
官庁内部の調査手続は含まれないものと解すべきである。
イ 上記解釈は一般的な判断の枠組みであって、査察の内偵調査が本件規定にいう
「調査」に該当するかどうかについて直接触れたものではない。しかし、査察の内
定調査は、納税者からの密行性にその本質があり、「外部から認識し得べき具体的
調査」として現われないからこそ「内偵調査」と呼ばれるのであるから、通常、更
正の予知と結びつくことはあり得ず、そもそも本件規定にいう「調査」には該当し
ないと解することが理論的帰結である。
ウ 原判決は、本件規定にいう「調査」は、何ら限定が付されておらず、解釈上も何
らかの限定を付すべき理由は見当たらないから、納税者が更正があるべきことを予
知する可能性のある調査のすべてが含まれると解すべきであり、したがって、課税
要件事実の充足を認識するための一連の判断過程の一切をいうと判示する。しかし、
行政部門で通用してきた上記行政解釈をあえて採用しない以上、条文の文言だけで
なく、その実質的根拠を示す必要があると思われるが、そのような実質的根拠は示
されていない。
また、原判決は、内偵調査であっても、外部に知れることが「絶無とはいえない」
から、内偵調査を本件規定にいう「調査」から除外する理由はない旨判示するが、
「絶無とはいえない」ような極端な事例を想定して一般論を組み立てて解釈する必
要があるのか疑問である。原判決の立場からすると、内偵調査のように本来公開に
なじまないとされる活動がいかなる経過で納税者に察知されて更正の予知に結び
ついたのか、という事実関係が訴訟上の争点になることが避けられない。しかし、
その点の具体的な解明を訴訟手続の場で尽くそうとすると、行政上の秘密を保持で
きない事態があり得ようし、逆に、具体的解明を尽くさないで決着を付けようとす
ると、曖昧な証拠しか伴わないまま課税庁の主張を採用するという不公正かつ法的
に不安定な事態を招きかねない。いずれの事態も好ましくないとすれば、内偵調査
はそもそも本件規定にいう「調査」に当たらないとして本件規定を運用することが、
賢明にして実際的、合理的な解決というべきである。
エ 仮に、内偵調査も本件規定にいう「調査」に含まれると解する場合には、内偵調
査として客観的にいかなる調査が行われたのか、その調査がいかなる事情で更正の
予知に結びついたのか、という点について、課税庁たる被控訴人に具体的に主張立
証させることが必要である。内偵調査の性質上、行政上の守秘義務の壁に遮られて、
その具体的内容を事後的に不服審査手続や訴訟手続で明らかにすることは困難で
あり、そのような場合に、曖昧な証拠しか存在しないのに内偵調査によって脱税行
為が把握されていたとの事実認定をしたり、課税庁側の主張を無批判に受け入れた
りして納税者の法的地位を不安定にすることは許されない。
しかるに、原判決はこのような視点を欠如しており、調査の内容は問わず、とに
かく調査の存在さえ明らかになっていればそれで足り、その調査の具体的内容が不
9
明でも、本件規定にいう「調査」になる旨判示する。この解釈からすると、課税庁
側としては、具体的内容を明らかにしないで何らかの内偵調査を行っていたことを
主張、立証することで足りることになり、内偵調査の存在と更正の予知との結びつ
きの主張、立証が曖昧なまま、納税者に不利益に扱うものであって不公正であり、
法的安定性と予測可能性をないがしろにするものである。
本件規定の適用を否定するためには、出発点として、納税者の主観的動機もさる
ことながら、何よりもまず「調査」が客観的に存在することが確定されなければな
らない。「調査」の存在が曖昧である場合には、納税者が「調査」の影におびえて
修正申告を決意したときであっても、やはり本件規定の適用は肯定されるべきであ
る。
オ そして、実際にも、査察部は、内偵調査としての銀行に対する調査など行ってい
ない。
被控訴人は、査察部は平成6年2月ころから控訴人らに対する内偵調査を行って
おり、同年3月22日には控訴人らの不正がほとんど分かった状態に至ったので
「内てい立件決議書」を作成した旨主張し、原審もそのように認定している。しか
し、同年2月から同年3月22日までの間に収集された控訴人らに関係する調査資
料は一切提出されていないし、同日以降、丁税理士が今治税務署の戊副署長に修正
申告の決意表明をした同年4月11日までの間についても、わずかに同年3月29
日付けのC、D(乙らの娘夫婦)の住民票1枚が提出されているだけであり、それ
以外に控訴人らに関係する具体的な調査資料は提出されていない。したがって、上
記内てい立件決議書は、同年3月22日に作成されたものではなく、同年4月12
日に日付を遡らせて作成されたものである。
また、被控訴人は、控訴人らが査察部の内偵調査の事実を察知していたと主張す
る。しかし、原審証人E(査察部職員)は、控訴人らに対する内偵調査としての銀
行調査について、その内容はもちろんのこと、これを行ったか否かについてまでも、
査察の内偵手法に関わるからという理由でその証言を拒否し、銀行調査の際に持参
するとされている国税局長名の「調査証」(承認証)の存否についても内偵手法に
入るとして証言を拒否し、さらに、高松国税局長は、「調査証」の送付嘱託に対し
て、査察調査手法にかかわることであり、内容を明らかにすることによって査察調
査事務に支障を来すという理由で、文書の存否を含め回答できない旨回答したので
あって、結局、「調査証」は提出されていない。控訴人らの調査によれば、査察部
が銀行に対する調査をした事実はないから、「調査証」なるものも存在するはずが
ない。これらの事情を考慮すると、査察部が平成6年2月ころから控訴人らを対象
として銀行調査をしていたなどということはあり得ない。したがって、控訴人らが
かかる内偵調査を察知したということもない。
(3) 所轄税務署に対する修正申告の事前相談とその後の「調査」
原判決は、丁税理士が戊副署長を訪問し、修正申告の可否を相談していることに照
らすと、控訴人らがその時点で修正申告の意向を有していたものと認めることはでき
るが、将来修正されるべき内容については詳細は明らかになっておらず、今治税務署
が控訴人らに対する調査を行う必要も根拠も失われていないということができ、同調
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査を本件規定にいう「調査」から除外することは理由がないと判示する。
しかし、このような原判決の解釈からすると、修正申告を決意した上で窓口に事前
協議ないし相談を求め、その後に調査を受け、修正申告書の提出に至った場合、課税
庁は調査の存在を主張して本件規定の適用を否定することがまずは可能である。これ
に対し、納税者としては、その前に修正申告を決意していたことを証明しなければな
らないが、その決意をしていたことの証明は、単に決意表明をしたというだけでは足
りず、修正申告の内容の概要を明らかにしたのでも足りず、その詳細を明らかにする
必要があるのであって、表明した内容にうっかり脱漏でもあれば、正直に修正申告書
を提出すると断言できる状況ではなかった、とされるおそれがある。すなわち、修正
申告の提出に先立って所轄税務署に修正申告の方針を表明して事前指導を受けた場
合、その際に修正申告の詳細を明らかにしなかったときは、所轄税務署の調査があっ
たこと、表明した修正申告の詳細が明らかでなかったことを理由として、仮に納税者
がそのすべてについて明らかにする意思であったとしても本件規定の適用がないと
いうことになりそうであり、いかにも不合理である。
しかも、原判決は、仮に納税者がすべてを明らかにする決意で事前に修正申告の意
思を表明した場合でも、資料を持参せず、問われる前に会社名を告げず、修正申告書
の提出時期を明らかにしなかったときは本件規定の適用は認められないとするよう
である。これでは、事前の決意表明は納税者にとって調査を招き寄せるだけの有害な
行為ということになるから、修正申告書を作成していきなり窓口で受理するよう求め
ることが上策であり、修正申告書の受理を留保されたり、事前の協議、指導を求めら
れることがあっても絶対に応じてはならないということになりそうである。
そうすると、丁税理士は、結果として、控訴人らの依頼に背き、控訴人らに対して
税理士としての善管注意義務の違反による損害賠償責任を負うことになる。丁税理士
としては、(査察部の内偵調査の問題をひとまず措けば)事前指導を求めないでいき
なり修正申告書を提出してさえいれば本件規定の適用が認められたからである。しか
し、仮に架空経費の計上分を修正申告の対象としないで、売上除外だけに限定して修
正申告書を提出し、その後の調査により架空経費の計上分が発覚したという場合であ
っても、売上除外分に関する限りは本件規定の適用が認められることに注意しなけれ
ばならない。いきなり修正申告書を提出すれば、その内容が全貌をすべて明らかにし
ていなくとも、明らかにした限度では本件規定の適用が認められるのに、事前の指導
を求めたばかりにその際の説明が概括的であったからという理由で本件規定の適用
が全面的に否定されてしまうというのが原判決の立場であるが、いかにも不条理な解
釈といわざるを得ない。
(4) 本件における要件事実
特定の国税について過少申告をした納税者が、訴訟において、本件規定の適用によ
り加算税の減免の効果を主張する場合の請求原因事実は、①納税者が特定の国税の申
告手続をなし、それが過少であったこと、②過少申告に基づいて課税庁から加算税(又
は重加算税)の賦課決定を受けたこと、③当該申告内容について修正申告書を提出し
たこと、である。これに対し、課税庁が加算税減免の効果を阻止するためには、抗弁
として、その申告にかかる国税について調査があったことを主張、立証しなければな
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らない(調査の不存在は、請求原因事実ではない。)。そして、再抗弁事由として、納
税者が当該調査よりも前の時点で修正申告書の提出を決意し、その決意に基づいて当
該修正申告書を提出したものであること(すなわち、当該申告に係る国税についての
当該調査があったことにより更正を予知して修正申告書を提出したものではないこ
と)を主張、立証すれば加算税減免の効果を受けることができる。重要なのは、この
再抗弁事由は、いうまでもなく、上記調査の存在という抗弁事由が主張、立証されて
初めて問題になるということであり、その存否が不明の場合には、抗弁事由が成り立
たないから、再抗弁事由に入るまでもなく、請求原因が成り立ち、納税者は加算税減
免の効果を受けることができるのである。
そして、上記「調査」は、調査それ自体として、一定の進展段階に至っていること、
すなわち、税務職員が納税者の申告に係る国税についての調査に着手してその申告が
不適正であることを発見するに足るか、又はその端緒となる資料を発見し、これによ
りその後調査が進行し、先の申告が不適正な申告漏れの存することが発覚し、更正に
至るであろうということが客観的に相当程度の確実性をもって認められる段階に達
したことが必要であると解される(昭和61年東京高裁判決)。
また、再抗弁に関して、昭和61年東京高裁判決は、上記「段階に達した後に、申
告書の提出がなされたときは、経験則上、申告の決意は、右の段階後になされたもの
と事実上推定すべきであり、この推定を破るためには、調査の着手後で、かつ、調査
が右の段階に至る前に、申告の決意とその内容を税務職員に進んで開示する等のこと
が必要である。」とするが、税務職員に進んで開示する行為は、確定的決意の存在を
外部的に認識できるための具体的行為として例示しているにすぎず、これだけに限定
する趣旨ではない。本件において、控訴人らは、税理士に委任して修正申告書の提出
を依頼し、そのために必要な帳簿資料を税理士に渡し、修正申告の資料として秘匿し
た預金のメモを作成するなどしていうのであり、これらの行為は、修正申告をする確
定的決意の存在を外部的に認識できる行為と評価すべきである。
【被控訴人】
(1) 更正予知の判断基準時と認定基準について
ア 本件規定にいう更正予知の「判断基準時」とは、いつの時点で更正予知の存否を
判断すべきかという問題であるのに対し、更正予知の「認定基準」とは、何によっ
て更正予知の存否を判断すべきかという問題であると考えられる。従来は、更正予
知の「認定基準」を中心に議論が展開されてきたものである。
更正を予知しないでした修正申告の意義に関する見解としては、①調査着手(開
始)後の修正申告は更正予知に当たるとする「調査着手説」、②具体的な不適正事
実が発見され、これにより申告漏れのあることが把握された後に提出された修正申
告書を、更正を予知して提出されたものとする「不足額発見説」、③不適正事実の
端緒を把握した時点を基準とする「端緒把握説」ないし更正に至るであろうという
ことが客観的に相当程度の確実性をもって認められることを要件とする「客観的確
実性説]がある。
これらの説は、調査開始後どの時点で当該納税者が更正の予知をし得るかという
更正予知の認定基準に係るものであるが、調査着手説以外の2説は、調査の程度な
12
いし進捗状況を問題にしている点で共通しており、調査着手説とは区別されると考
えられる。
調査着手説に対しては、調査着手後に提出された修正申告書は全て更正を予知し
てされたものになり、文理上問題があるとの批判があるが、次のような点を考慮す
ると、調査着手説が、加算税制度及び本件規定の趣旨に合致した妥当な結論が得ら
れると考えられる。
すなわち、法律上の解釈の違いに気づかず申告期限までに正確な確定申告をした
と思っている者(申告書提出後に税務職員による調査が行われたとしても、具体的
な誤りを指摘されるまで更正を予知することはできない。)とは異なり、最初から
隠ぺい又は仮装により不正確な確定申告をした者は、確定申告書の提出時点で税金
を過少にするための種々の工作を既に行っているのであるから、課税庁の動向に敏
感になることはいうまでもない(時には、その工作が発覚しないように課税庁の動
向に合わせて種々の対策を講じる場合もある。)。したがって、そのような不正申告
者は、自らの申告に関連する課税庁の動向を察知した時点で、十分に更正を予知で
きる状況にあったというべきであって、このような場合は、調査着手説により妥当
な結果を得ることができる。
もっとも、単なる計算の誤り等により結果として過少申告となっている者等が、
調査に着手されたことを契機に計算の見直し等を行い、その結果、誤りに気づいて
修正申告に及んだという事例については、端緒把握説ないし客観的確実性説によっ
て、当該調査の程度や進展状況との関連で更正の予知の存否を判断することが妥当
であり、あらゆる事案を調査着手説で律することは自ずから限界もある。しかし、
端緒把握説ないし客観的確実性説にも税務調査の実態に照らし問題がある。結局、
あらゆる事案を1つの説で割り切ることはできず、要は、予知の存否についての事
実認定の問題に帰着する(小貫芳信「附帯税をめぐる訴訟(2)」税理38巻16号
216頁〔乙31〕)ものと考えられる。
そして、被控訴人は、更正予知の認定基準としては、第1次的には調査着手説を
採る(「第1次的には」という趣旨は、調査着手後に提出された修正申告書は、理
由の如何を問わず更正を予知して提出されたものと決め付けるものではない、とい
う意味である。)。
イ これに対し、控訴人らは、端緒把握説ないし客観的確実性説を採るようである。
これらの説によれば、仮に、修正申告書の提出は調査後であったとしても、調査前
に修正申告を決意していたことを納税者の側で立証できれば、当該修正申告書は更
正を予知して提出されたものではないとされる(昭和61年東京高裁判決)。更正
予知の認定基準に関する従来の議論は、修正申告書が提出された時点において、調
査着手後のどの段階に至っていたかによって更正予知の存否を判断するという点
では共通の立場すなわち提出時説に立つものであったが(したがって、更正予知の
「判断基準時」について提出時説を採るからといって、更正予知の「認定基準」に
関する上記アの①ないし③の3説のいずれかが確定的に決まるという関係にはな
いと解される。)、昭和61年東京高裁判決は、更正予知の判断基準時について「決
意時説」を採ることを判示したものと解される。
13
ウ 被控訴人は、更正予知の認定基準については、前示のとおり第1次的に調査着手
説を採り、その判断基準時については、第1次的には提出時説を採るものである(た
だし、特段の事情が認められる場合にまで「提出時」に固執するものではない。)。
被控訴人が、更正予知の判断基準時として第1次的に提出時説を採る根拠として
は、通常、現実に修正申告書が提出された時点における納税者の内心は、修正申告
の意図ないし動機を最もよく表しているといえるから、その時点における当事者の
内心を探求することが最も合理的であると考えられること、本件規定の文言が「修
正申告書の提出があった場合において、その提出が・・・予知してされたものでな
いときは」となっており、現実にされた修正申告書の提出が将来における更正の可
能性を予測した上でされたものであるか否かを問う形式になっていること、さらに
根本的に、納税申告制度及び加算税制度の趣旨に照らした場合、本件規定の適用は
厳格に行われるべきことが挙げられる。
また、第1次的に「決意時説」を採り得ない理由は、同説によれば、「更正の予
知」という納税者の主観的認識に関わる事柄に「修正申告の決意」というやはり納
税者の主観に属する事柄が加わることになるのであって、判断要素の中における主
観的な事柄のウエイトが増大すればするほど、客観的かつ確実な判断から遠ざかる
結果になるおそれがあるからである。
もっとも、真に自発的な修正申告の意思表明(あるいは確定的な決意表明)を行
ったにもかかわらず、その直後に犯則調査を受けたため、やむを得ず申告が遅延し
たというのであれば、修年申告書の提出時点のみを問題にして特段の事情を考慮せ
ずに本件規定の適用を認めないとすることには疑問があり、「決意時説」により、
真に自発的な修正申告の意思表明をもって修正申告書の提出と同視して、本件規定
の適用を認めるべきである。しかし、「修正申告の意思表明」が単なる「通知」に
とどまるものであったり、真に自発的なものとはいえない特段の事情があるような
場合には、当該事案に即した判断が行われるべきところ、本件においては、修正申
告の意思表明に至るまでに控訴人らが査察部の内偵調査を「察知」したという特段
の事情が認められるのである。
すなわち、控訴人らは、長年にわたり不正申告を重ねていたところ、偶然、査察
部の内偵調査を察知するところとなり、そのまま放置した場合には、早晩査察部に
よる強制調査を受けることになるものと考え、関与税理士をも交えて対策協議を行
った結果、とりあえず、所轄税務署に修正申告の話を持ち込んでおけば、場合によ
っては査察部の調査を回避できるかもしれないとの一方的な期待感をもって、当該
税理士を介して修正申告の意思表明を行ったものである。これが、修正申告の意思
表明を行ったとされる時点までの本件の事実関係の核心であり、特質である。この
ような経緯でされた修正申告の意思表明が真に自発的なものといえないことは明
らかであり、修正申告の決意自体が自発的なものといえない以上、本件規定の適用
はないものといわなければならない。
(2) 「決意時説」を採った場合の内偵調査の内容及び進捗状況に関する主張立証につ
いて
ア 決意時説とは、単に、更正予知の存否に係る判断を、修正申告の「決意時」で行
14
うとする更正予知の判断基準時に関する1つの説ではなく、修正申告の決意とその
内容を税務職員に進んで開示することをもって、修正申告書の「提出」と同視する
ということを含意した見解であると考えられる。そうすると、本件の場合、仮に丁
税理士を介した控訴人らの修正申告の申出が、決意時説のいう「修正申告の決意」
表明であるとすれば、申出の翌日に着手された今治税務署職員による調査の着手前
に修正申告書の「提出」と同視される修正申告の決意表明がされたことになるので
あるから、その前に「調査」が存在しない限り、前記の更正予知の認定基準に関す
るどの見解によっても、それは「更正があるべきことを予知してされたものでない」
ことになる。
しかし、丁税理士を通じた控訴人らの修正申告の申出が、仮に確定的な修正申告
の決意に基づくものであり、その申出を決意時説によって修正申告書の「提出」と
同視することにしたとしても、次に、その決意自体が、更正を予知してされたもの
でないといえるか否かが問題となる(確定的な修正申告の決意を表明したことと、
その決意が更正予知をせずに行われたこととは、同義でない。)。その意味で、決意
時説を採る場合、当該決意と本件内偵調査との関係が問題になる。
イ 控訴人らのように当初申告の段階で過少申告であることを明確に認識している
ような場合は、仮に判断基準時については決意時説を採るとしても、更正予知の認
定基準としては調査着手説を採るのが相当であるから、内偵調査であっても、納税
者がそれを「察知」した以上は、本件規定にいう「調査」に該当するものというべ
きであり、したがって、控訴人らによる修正申告の申出は、更正があるべきことを
予知してされたものである。
調査着手説は、いうまでもなく「調査の存在」を前提とした更正予知の認定基準
であり、調査の内容、調査の進捗状況までは問わないとの基本的立場に立つもので
ある。
ウ 査察部において行っていた内偵調査の具体的な内容を明らかにすることは、内偵
調査の手法を明かすことになる上、上記イのとおり、内偵調査であっても、納税者
がそれを察知した以上は、本件規定にいう「調査」に該当するから、本件では内偵
調査の存在を立証すれば足り、それ以上に調査の内容や進捗状況を立証する必要は
ない。
ただし、被控訴人は、内偵調査の内容については、明らかにできる範囲のものは
明らかにしているし、その進捗状況についても、査察部が、控訴人らに対する法人
税等調査を行った今治税務署の職員から、控訴人らが内偵調査の事実を察知してい
る事実を知らされたため、早急に強制調査に着手する必要があると判断し、当該法
人税等調査の翌日に高松簡易裁判所に対して捜索差押許可状の発付を請求し、同日
その発付を受けている事実に照らせば、本件での内偵調査が相当程度にまで進展し
ていたことは容易に推測できるのであり、その進捗状況を裏付ける間接的な証拠に
なる。
(3) 「調査があったこと」の意義
ア 本件規定における「調査」の意義については、国税通則法上具体的な定義規定は
ないが、同法24条にいう「調査」とは、課税庁が課税要件事実の充足を認識する
15
ための一連の判断過程の一切をいうものと解されているところ、同じ法律上の本件
規定の文言を別異に解すべき理由はないから、課税資料の収集開始から具体的な処
分を行うに至るまでの一連の判断過程一切をいうと解すべきである。また、本件規
定における「調査」には、国税査察官の調査も含まれる。
イ 本件規定における「調査」は、「更正の予知」の前提となるものであることから、
当該納税者に対し外部から認識し得べき具体的な調査を指すものと解され、課税庁
内部の調査手続は、「更正の予知」の前提となる調査には該当しないと解されてい
る。
また、臨場調査のための日時の連絡を行った段階では、原則として調査があった
ものとは取り扱わないが、申告書の内容を検討した上で非違事項の指摘等をしたと
きは調査があったものと取り扱うこととしている(国税庁事務運営指針)。したが
って、課税庁内部の調査手続すなわち内部的調査は、「更正の予知」の前提となる
「調査」になるかどうかが問題とされることはあっても、「調査」に該当すること
には問題がない。
ウ 次に、更正の予知の存否を判断する場合における課税庁の調査は、以下のとおり、
当該納税者に対する「直接的な」調査に限定されるものではないと解すべきである。
本件規定においては、調査によって当該納税者が更正を予知するという認識の欠
如が過少申告加算税の免除の要件とされている以上、その調査が当該納税者に認識
される必要があるから、その調査は、実地あるいは面接調査など外部からこれを認
識し得べき具体的な調査に限定されるべきではある。
しかし、当該納税者が調査を認識するのは、自らが直接に実地調査等を受ける場
合に限られるわけではなく、例えば、当該納税者の取引先等の調査において当該納
税者に関わる問題事項が発見されたことを、取引先等から通報された場合などは、
その認識は「間接的」なものであるにせよ、更正の予知との関係においてそれを本
件規定にいう調査から排除する理由はない。まして、本件のように、当初申告時に
おいて当該申告所得金額が隠ぺい・仮装行為によって過少となっていることを当該
申告者(納税者)自身が明確に認識している場合には、調査を直接的に認識したか
否かを更正の予知との関係で問題とする必要性は少ない。この点、前記国税庁事務
運営指針において、「その法人に対する臨場調査」に続けて「その法人の取引先の
反面調査」を挙げているのも、取引の当事者が相互に連絡を取り合っていることが
多い現状に着目し、当該納税者について直接の具体的調査に入っていない場合でも、
取引先の通報等により、「調査があったこと」を認識し得ることを前提として規定
したものと解することができる。
以上のとおり、本件規定における「調査」とは、更正を予知するに足りる調査を
いうものと解されるから、直接、当該納税者を対象に行われる調査に限定されるも
のではなく、間接的な調査であっても、事例によっては「調査」に該当する場合が
あると考えられる。また、調査内容等に対する納税者の認識内容が抽象的なもので
あっても、そのことのみを理由に本件規定にいう「調査」から除外するのは相当で
ない。
エ ところで、内偵調査は、文字どおり、前記の「外部から認識し得べき具体的な調
16
査」の対極にあるものとも考えられる。しかし、控訴人らは、その内偵調査を察知
し、それを契機として修正申告の「申出」をしたのであるから(更正の予知の判断
基準時につき、仮に決意時説を採るとして)、少なくとも、その申出に至るまでに
控訴人らは当該内偵調査を認識したということになる。控訴人らによって察知され
たという以上は、必ずしも控訴人らに対して「直接的に」実施されたものに限る必
要はないと考えられる。まして、控訴人らのように、隠ぺい又は仮装により多額の
不正申告を長年にわたって続けてきたことを十分認識しているような納税者の場
合は、たとえ「間接的な」調査であっても、それを察知した時点で十分に更正を予
知できる状況に至ることは、多言を要しない。
したがって、内偵調査であっても、それが察知されたときは本件規定にいう「調
査」に該当する。
オ また、控訴人らが内偵調査を察知(認識)したことが、修正申告をするとの確定
的決意の「契機」となったことが明らかであり、当初申告時から過少申告になって
いることについて控訴人らに明確な認識があったことをも併せ考えれば、「察知」
自体は調査に対する「確定的認識」とまではいえないものであったとしても、確定
的ではないことのみをもって当該認識(察知)の対象である内偵調査の存在までも
否定する合理的な理由はない。したがって、控訴人らによる内偵調査の察知が抽象
的なものであったとしても、「調査があったこと」に該当するということができる。
4 争点三(被控訴人の本件賦課決定処分は、信義則に反するか。)に関する当事者の当
審補足主張
【控訴人ら】
(1) 被控訴人は、本件規定の解釈につき、前記3の【控訴人ら】の主張のとおり、国
税庁事務運営指針や従前の行政解釈と異なる見解に立って本件規定の適用を否定し
たが、これは信義則に照らして許されない。
(2) 控訴人らは、平成6年4月12日に今治税務署職員が臨場調査をした際、控訴人
らが聴取に応じた供述内容や提供した資料が、一部にせよ、直ちに査察部に通報、提
供されて控訴人らに対する犯則調査に利用される結果となることは告知されておら
ず、予測することもできない状況であったにもかかわらず、被控訴人が、控訴人らに
無断で、上記供述内容や資料を査察部に提供したことは、誠実に税務調査に応じて正
直に協力した納税者の信頼を裏切ることであるから、査察の結果を利用して、本件賦
課決定処分をすることは信義則に照らして許されない。
【被控訴人】
(1) 本件規定についての被控訴人の解釈は、国税庁事務運営指針等の公表見解と矛盾
するものではなく、被控訴人独自のものでもない。
(2) 臨場調査の目的や査察部に提供した情報内容について、控訴人らが主張する前提
は誤っているが、それに加えて、控訴人ら主張の、税務調査における供述内容等が犯
則調査に利用される結果となることを納税者に告知することについては、法令上格別
の定めがなく、また、辛統括調査官が査察部に通報した時点で、その連絡内容や送信
した資料が査察部においてどのように使用されるか等については、辛統括調査官も被
控訴人も知る由がなかったものである。したがって、納税者の信頼に対する裏切りで
17
ある旨の控訴人らの主張は失当である。
第3 当裁判所の判断
1 事実関係
前記前提となる事実、証拠(甲1ないし3号証の各1ないし7、4号証の1・2、6
号証の1ないし5、7号証の1ないし6、8号証、11・12号証の各1ないし5、1
3ないし24号証、26ないし41号証、42・43号証の各1・2、44、45、4
9、52ないし70号証、71号証の1・2、72、74ないし82、91、98、9
9、136、137号証、乙4ないし27号証、28号証の1ないし6、37号証の1
ないし3、証人戊、同丁、同辛〔第1、第2回〕、同己、同F、同G、同E〔第1、第
2回〕、同H、控訴人B代表者〔乙・第1、第2回〕、控訴人A代表者〔甲〕)及び弁論
の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) 控訴人らは、いずれも乙が実質的に経営する同族会社であり、丙及び甲が両社の
経理事務を担当し、従前は、丁税理士が関与税理士となって、所得脱漏のない確定申
告書を作成し、被控訴人に提出していた。
(2) ところが乙は、平成2年ころ、控訴人らの法人税につき、同和団体を通じて確定
申告書を提出すれば、申告所得金額が低額であっても国税局がこれを黙認し、調査も
されないなどと聞き及び、控訴人Aは平成2年7月期(甲11号証の2)、平成3年
7月期(同号証の3)、平成4年7月期(同号証の4)の各事業年度について、控訴
人Bは平成3年1月期(甲12号証の2)、平成4年1月期(同号証の3)の各事業
年度について、売上除外をし、さらに架空経費を計上した金額を記載した各法人税確
定申告書を、同和団体を通じて被控訴人に提出した。同各確定申告書は、決算時に、
丁税理士が、控訴人らにおいて作成した試算表に基づいて当期利益を算出し、その結
果を一旦控訴人らに報告してから、さらに控訴人らの指示に従って販売手数料等の費
目の振替伝票を作成し、これを計上した修正を行うという経緯で作成されていた。
丁税理士は、乙から同和団体に手数料を支払うと聞いていたので、架空経費の計上
をしているとは理解していたが、売上除外の存在や所得脱漏の詳細についてまでは把
握していなかった。控訴人らは、上記経緯で作成された確定申告書を同和団体を通じ
て被控訴人に提出したが、丁税理士は、これらの確定申告書の「税理士署名押印」欄
に関与税理士として署名押印をすることはせず、同欄には、「I連合会」の記名印と
「J」の印章が押捺されている(ただし、控訴人Aの平成2年7月期分については「J」
の印章が押捺されていない。)。
(3) その後、同和団体の代表者が平成4年10月ころ死亡したので、控訴人Bの同年
1月期(甲12号証の4)と平成6年1月期(同号証の5)の各事業年度、控訴人A
の平成5年7月期の事業年度(甲11証の5)の各法人税確定申告については、丁税
理士が関与税理士として確定申告書を作成し、被控訴人に提出した。丁税理士は、控
訴人Bの平成5年1月期の確定申告書作成の際、甲から、控訴人Bが売上除外の方法
によっても所得脱漏をしていた事実を聞かされたので、同事業年度の元帳において売
上除外されていた総額1億1414万6800円を正規に計上した上で、同事業年度
の確定申告書を作成した。その際、丁税理士は、甲に対し、他の事業年度についても
売上除外の事実はないか尋ねたところ、甲はこれを否定した。
18
(4) 控訴人らは、平成2年以降、売上除外に係る受取手形・小切手を取り立てるため
の普通預金口座(裏預金口座)を複数の銀行(控訴人AがK銀行及びL銀行の各今治
支店、控訴人BがM銀行今治支店)に実名で開設するとともに、取り立てた売上金を
保管するために定期預(貯)金をしていた。その定期預(貯)金は、郵便局を含む8
つの金融機関(L銀行の今治支店と波止浜支店は合わせて1つとして計算)で合計2
億9987万円余に及び(以下、郵便局に預け入れた定期性の貯金を含めて「定期預
金」という。)、控訴人らは、乙及び甲の名義を使用したほか、N、O、D(乙・甲間
の長女)、C(Dの夫)、P、Q(甲の姪)及びRの名義を借用していた(甲6の1な
いし5)。L銀行今治支店は、控訴人らが上記のような定期預金もしていた銀行の1
つであり、控訴人らは、売上除外に係る受取手形・小切手を取り立てるための普通預
金口座は平成5年中には解約していたが、除外した売上金を保管するためにQの承諾
を得ることなく同人名義で預け入れていた定期預金はそのままにしていたところ、甲
は、平成6年2月下旬ころ、上記Qから電話で、「L銀行今治支店から定期預金の満
期(同月22日)の案内が2回ほどあったが、おばさん、もしかして私の名前で定期
預金をしていない?」と尋ねられた。そこで、甲は、同定期預金の名義を自己名義に
書き換えてもらうため、同月中に同銀行同支店に赴き、同支店窓口の女性行員にその
旨申し出たところ、同女性行員から、今、同支店に国税局が来ているからもう少し時
間をおいてから書き換えた方がよいのではないかとの助言を受けた。甲は、同女性行
員からそれ以上に国税局の調査の内容等を聞いたわけではなかったが、同女性行員の
上記助言を、今名義を書き換えると国税局から同預金が裏金ではないか、贈与された
ものではないかと疑われるので、名義書換えをするのは少し時間をおいた方が良いと
いう趣旨に理解した。
甲は、同支店の普通預金口座自体は上記のとおり平成5年中に解約していて当時は
存在しなかったし、上記のとおり具体的な調査内容等は分からなかったが、不安な気
持ちになった。
(5) 帰宅した甲から上記経緯を聞いた乙は、当日(平成6年2月中)すぐにL銀行今
治支店に対し、「AかBかの調査に来とるんですか」と尋ねたところ、同支店の回答
は、「AやBやなどということは一切分からない」というものであり、国税局のどの
部署がどこの会社を対象にいかなる調査を行っているのかは明らかにならなかった。
乙は、同月ころから、2、3回、助言を得ようとして丁税理士に対して、銀行に査察
が来て調べているらしいと話したが、丁税理士は、乙がなぜそんなに査察のことを心
配しているのか分からなかったので、聞き流していた。
乙は、同年3月上旬、当時の取引銀行であるK銀行波止浜支店のS次長にも電話で
問い合わせたところ、S次長から、同支店にも国税局の調査があったが、K銀行では
平成4年に吸収合併した旧T銀行の顧客の資料はもとからのK銀行の顧客の資料と
分けて保管しており、控訴人らは旧T銀行の顧客であって、国税局は旧T銀行の顧客
の資料は調べていないから、控訴人らは調査対象になっていないとの回答を得た。
乙は、さらに、U信用金庫波止浜支店にも問い合わせたところ、「国税が来ておっ
たことは来ておったが、どこか分からん」という返事であった。乙及び甲は、国税局
が行っているという調査の対象、内容等が依然として明らかではなかったので、不安
19
な気持ちが強くなった。
(6) 査察部は、平成6年2月ころないしは遅くとも3月ころには、控訴人らについて、
脱税が行われているとの疑いを抱き、内偵調査を始めており、その結果得られた資料
によって、査察事件として立件可能であると判断して、同年3月22日、同日付各内
てい立件決議書(控訴人Aに関するものが平成5年度内てい第12号〔乙20号証〕、
控訴人Bに関するものが平成5年度内てい第13号〔乙21号証〕。原審で提示され
た後記の刑事事件の記録中の抄本を原本とするものである。)を作成して、控訴人ら
2社を犯則嫌疑者とする内偵立件決議を行った。
同各内てい立件決議書には、いずれも、端緒資料は「資金資料」、税目は「法人税」、
資料番号は、控訴人A分が「平成5年度 資第0508236号」、控訴人B分が「平
成5年度 資第0508245号」と記載されている。内偵立件の理由は、それぞれ
「別紙要内てい選定理由書記載のとおりである。」とされているが、内てい立件決議
書に添付された各要内てい選定理由書(乙20、21号証)の「選定の理由」欄は、
控訴人A分の8行全部、控訴人B分の6行全部がそれぞれマスクされて抄本として作
成されているため、これを読むことができない。
(この点について、控訴人ら訴訟代理人は、各内てい立件決議書は、同年3月22
日に作成されたものではなく、同年4月12日に日付を遡らせて作成されたものであ
ると主張し、上記各内てい立件決議書は、原審で記録提示された控訴人ら及び乙を被
告人とする刑事事件〔松山地方裁判所平成7年(わ)第166号、第167号〕におい
て「選定の理由」欄に紙を貼って隠した上で証拠として提出された文書の写しである
が、検察官が弁護人に閲覧の機会を与えたので、高田義之弁護人〔控訴人ら訴訟代理
人〕が確認したところ、控訴人Aを犯則嫌疑者とするものには「公表外銀行であるL
銀行今治支店に手形、小切手などを実名で普通預金に入金後、実名、借名の定期預金
で留保している。」と、控訴人Bを犯則嫌疑者とするものには「公表外銀行であるM
銀行今治支店に手形、小切手などを実名で普通預金に入金後、実名、借名の定期預金
で留保し過少申告をしている。」と記載されていた旨主張する〔控訴理由書〕。しかし、
後記のとおり、広島国税局が平成6年3月24日に収受した同月23日付高松国税局
査察部長の調査嘱託書及び同年4月7日受取りのこれに対する調査回報書、東京国税
局が同年3月25日収受した同月23日付高松国税局査察部長の調査嘱託書及び同
年4月1日受取りのこれに対する調査回報書には、いずれも、上記内てい立件決議書
に記載された控訴人Aに関する内てい立件番号(平成5年度内てい第12号)が記載
され、広島国税局が平成6年3月28日に収受した同月24日付高松国税局査察部長
の調査嘱託書及び同年4月8日受取りのこれに対する調査回報書には、いずれも、上
記内てい立件決議書に記載された控訴人Bに関する内てい立件番号(平成5年度内て
い第13号)が記載されており、他に、上記各内てい立件決議書が同年3月22日で
はなく、同年4月12日に作成されたとする特段の事情を認めるに足りる証拠もない
から、上記各内てい立件決議書はその作成日付である同年3月22日に作成されたも
のと認めるほかはない。そして、上記「選定の理由」欄における控訴人ら訴訟代理人
主張の記載は、マスクされた行の数に照らし、いずれもその要旨であろうと考えられ
るところ、控訴人ら訴訟代理人はそのような記載があるからこそ、各内てい立件決議
20
書(原本)は平成6年3月22日当時作成されたものではないと主張するものであり、
同原本にそのような趣旨の記載があったということ自体はこれを疑うべき事情がな
い〔高田義之弁護人が注意深くその記載を確認したことは、その主張内容からも窺わ
れる。そして、この記載によると、査察部においては、上記内偵立件決議の時点で、
かなり具体的に控訴人らの売上げ除外の手形・小切手取立口座や、資金の保管状況を
把握していたと推認できる。〕)
査察部は、上記内偵立件決議に基づき、査察部長名で、次のとおり広島国税局及び
東京国税局に対し調査嘱託を行った。すなわち、同月23日付高局査査―秘第240
号調査嘱託書(乙25号証)により、広島国税局調査査察部長に対し、控訴人Aを犯
則嫌疑者、防府税務署を調査先として控訴人Aの取引先であるV、W株式会社に対す
る課税事績等の収集を行うよう嘱託し(同月24日広島国税局収受。同調査嘱託書に
は、「当局において内偵調査中の内偵第5/12号事案について下記のとおり調査を
嘱託します。」と記載され、緊急嘱託の特記事項欄に「回報希望年月日・6年4月1
1日」と記載されている。)、同年4月7日、同月5日付広局査察秘第208号調査回
報書(乙22号証)を受け取り(同調査回報書には、「平成6年3月23日付、秘第
240号による貴局内偵第5/12号事案の調査嘱託」について調査事績を回報する
旨記載されている。)、同じく同月23日付高局査察―秘第238号調査嘱託書(乙2
7号証)により、東京国税局査察部長に対し、控訴人Aを犯則嫌疑者、横浜市中区役
所を調査先としてD(乙・甲間の長女)及びC(Dの夫)の住民票の徴求及び課税事
績の収集を行うよう嘱託し(同月25日東京国税局収受。同調査嘱託書には、「当局
において内偵調査中の内偵第5-12号事案について下記のとおり調査を嘱託しま
す。」と記載され、緊急嘱託の特記事項欄に「回報希望年月日6年4月8日」と記載
されている。)、同年4月1日、同年3月30日付東局査察秘第1060号調査回報書
(乙24号証)を受け取った(同調査回報書には、「平成6年3月23日付、高局査
察秘第238号による貴局内偵第5-12号事案の調査の嘱託」について調査事績を
回報する旨記載されている。)。また、同年3月24日付高局査査一秘第246号調査
嘱託書(乙26号証)により、広島国税局調査査察部長に対し、控訴人Bを犯則嫌疑
者、広島南税務署を調査先として控訴人Bの取引先であるg有限会社の直近4年分の
確定申告書外の徴求を行うよう嘱託し(同月28日広島国税局収受。同調査嘱託書に
は、「当局において内偵調査中の内偵第5/13号事案について下記のとおり調査を
嘱託します。」と記載され、緊急嘱託の特記事項欄に「回報希望年月日・6年4月1
1日」と記載されている。)、同年4月8日、同月6日付広局査察秘第212号調査回
報書(乙23号証)を受け取った(同調査回報書には、「平成6年3月24日付、秘
第246号による貴局内偵第5/13号事案の調査嘱託」について調査事績を回報す
る旨記載されている。)。
(7) 平成6年4月6日、表書きに住所として控訴人らの本店所在地が記載され、宛名
として「(株)A 甲様」と記載された封筒に入れられた差出人匿名の手紙が控訴人
Aに配達された(乙37号証の2・3)。その手紙には、「甲様、今、高松国税局の査
察が、お宅のAと、もう1社を調べております。その証拠に、今治市内の銀行をほと
んど調査しました。税理士先生やその他に、早めに相談して、対処したほうが懸命で
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す。(査察に恨みをもつもの)より」とワープロで記載されていた。
乙及び甲は、同手紙の差出人が不明であり、真偽についても確信が持てなかったも
のの、決定的に不安になった。同人らは、仮に査察によって脱税が公にされるような
ことになれば、控訴人らの持っている砂利採取の許可が取り消され、事業が成り立た
なくなるかもしれないと危惧し、夜もよく眠れなかった。
(8) 翌7日朝早く乙は丁税理士に電話で上記手紙のことを知らせて相談したが、巨額
脱税の事情を知らない丁税理士は、嫌がらせかいたずらではないかと返事した。
しかし、丁税理士は、午前9時半ころ、乙の弟で株式会社X社長のYから、乙らの
自宅に来てくれるよう頼まれたので、午前10時ころ、乙らの自宅に行った。自宅に
は、乙、甲、Yが居たほか、U信用金庫波止浜支店のj支店長、h司法書士も呼ばれ
ていた。乙は、銀行に国税局の査察が来て調べているようであることや、控訴人らを
査察部が調べている旨の匿名の手紙が届けられたことなどを説明して、手紙の差出人
を詮索したり、対応を相談したりした。そのうち、乙は、約5億円の売上除外をして
脱税していることを告白し、世間一般でいう自首に当たるものはないかと相談した。
これに対して、丁税理士は、自首に当たるものが修正申告である旨回答し、Yととも
に、修正申告をすることを強く勧めたが、その時点で、乙及び甲は、明確な結論を出
さなかった。その席上、乙は、架空経費計上の事実については触れなかった。途中で
甲が奥から売上関係の帳簿の入った紙袋を持ってきたが、丁税理士は、それに手を触
れることはなかった。
その後、乙は、以前国税局の調査を受けたことがあると聞いていた知人でZの経営
者であるaに電話で相談したところ、aは、査察部に勤務した経験のある税理士F(以
下「F税理士」という。)に電話で意見を聞いた後、乙に対し、電話で、修正申告を
したら助かるからと言って、早く修正申告をするよう勧めた。
(9) そして、乙及び甲は、最終的に修正申告をすることを決意した上で、同月9日(土
曜日)、乙は、丁税理士の事務所を訪問し、同税理士に対し、涙を流しながら助けて
下さいと言って、正式に、急いで修正申告の手続をするよう依頼した。
丁税理士は、正式に依頼を受けたものの、修正申告の対象となる事業年度の確定申
告書が同和団体を通じて出されていること、修正額が約5億円にも上るという特殊事
情があり、そのような修正申告書を提出した経験もなかったこと等から、税務署と相
談しないままいきなり修正申告書を提出しても手続が円滑に進まないおそれがある
と考え、直ちに修正申告書を提出すべきかどうか迷った。
(10) そこで、丁税理士は、尊敬する先輩税理士に相談するのがよいと判断したが同日
は連絡がとれず、同月11日(月曜日)になってようやく同税理士と面接することが
でき、その助言に従って、今治税務署の直税の責任者である副署長に今後の指示を仰
ぐこととした。
同日午前11時半ころ、丁税理士は、今治税務署を訪問し、副署長室において戊副
署長と面談した。
丁税理士は、戊副署長に対し、当初は控訴人らの法人名は伏せつつ、砂利採取業の
ある会社で、社長が砂利採取業の組合の組合長か会長をしている会社が、5年間にわ
たり各期約5000万円、合計約5億円の売上除外をして所得を脱漏していること、
22
自分が確定申告書を作成し、同和団体を通じて確定申告を行っていたこと、脱税の事
実が公表されると砂利採取の許可が取り消され死活問題となることなどを告げてか
ら、修正申告をしてもよいものかどうかを尋ねた(丁税理士は、それ以上に控訴人ら
の脱税の規模、方法の詳細は明らかにせず、何らの資料も提示しなかった。)。
これに対し、戊副署長は、一般的に任意の修正申告は自由である旨回答し、修正申
告書は十分に検討して提出するようにと告げた。丁税理士は、何時までに修正申告書
を出すという具体的な話はしなかったが、戊副署長は、その口振りから、2週間程度
のうちに提出されるであろうと理解した。丁税理士は、同副署長の回答を聞いて安堵
し退室しようとしたが、戊副署長から、その会社はどこの会社かと尋ねられたため、
もはや隠す必要はないと考え、その段階で控訴人ら2社の名を上げた。また、最後に、
丁税理士が、戊副署長に対して重加算税が賦課される見込みについて尋ねたところ、
戊副署長は、任意の修正の場合、通常は賦課されない旨回答した。
(11) 同日午後、丁税理士は、控訴人らの事務所を訪れ、乙及び甲に対し、戊副署長か
ら、修正申告は出してよい、重加算税は任意の申告の場合であれば通常は賦課されな
い旨告げられたと報告した。そして、丁税理士は、甲に対し、定期預金の一覧表の作
成を指示し、同時に、売上帳、手形帳、請求書等を預かって、直ちに自ら除外売上金
の集計表の作成を始めるなど、修正申告書の作成、提出の準備に取りかかった。
(12) 一方、戊副署長は、翌12日午前9時ころから、前日、丁税理士から修正申告の
相談があったことについて、辛統括調査官、法人課税部門第3統括国税調査官b(以
下「b統括調査官」という。)と協議し、協議の結果、脱税金額が多額であって、控
訴人らの修正申告の動機が不明確であること、案件が、担当の国税調査官ではなく、
副署長に直接持ち込まれた点に疑問があること等の事情にかんがみ、仮に修正申告書
が提出されたとしても、その金額が正確である確証はなく、いずれにしても調査が必
要になるなどの事情を考慮して、控訴人らに対する法人税調査を直ちに行うことにし
た。
b統括調査官及び辛統括調査官は同日(12日)午後零時30分ころ、己調査官及
び庚調査官に対し、控訴人らは多額の不正をしていて修正申告をしようとしていると
の情報があるので、事務所に赴いて、不正の内容、方法、修正申告書を提出しようと
する理由を調査するとともに、控訴人らから預かることができる帳簿、書類を持ち帰
るようにと指示した。その際、辛統括調査官は、併せて、これらの調査は単なるお尋
ねではなく正式な法人税調査であることを控訴人らに明確に告げるとともに、質問検
査権の行使として上記の調査等を行うよう指示した。他方、戊副署長は、同日午後1
時すぎころ、丁税理士に電話をかけ、実情を聞くために今治税務署職員を控訴人ら事
務所に行かせる旨告げた。
そこで、丁税理士は、控訴人らから預かっていた売上帳、手形帳、請求書や、作成
途中の売上除外金額集計表(甲7号証の1ないし6。ただし、控訴人Aの分は既に完
成しており、控訴人Bの分も7割方完成していた。)を持って、同日の午後2時ころ、
控訴人ら事務所に出かけた。
(13) 己調査官らは、同日午後1時30分ころ、控訴人らの事務所に到着し、同事務所
において、売上除外の動機・方法・金額、除外金額の決済方法・使途、今回修正申告
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をしようと思った動機等について乙及び甲に質問した。乙らは、己調査官らの税務調
査に素直に応じ、控訴人らは平成2年から売上除外をしていて、控訴人Aについては
その額が約2億6000万円になること、除外した売上げの決済は手形を用いて行っ
ていたこと、除外した売上げは乙及び甲や第三者名義の定期預金としたり、関連会社
への貸付金等としていたこと、同和団体を通じて確定申告をする方法で脱税していた
こと、査察調査が行われているかもしれないという情報が入り、これがマスコミ等で
取り上げられると砂利採取の許可が取り消されるおそれがあるので修正申告を行う
決意をしたことなどを供述した。
また、己調査官らは、乙及び甲に対し、帳簿、書類等の提示を求め、その場で、売
上帳の内容、売上金額集計表、総勘定元帳等について、簡単に確認した。甲は、当初、
普通預金通帳、定期預金メモ(除外した売上金保管のための定期預金の一覧表)につ
いて、提示するのを躊躇していたが、乙の指示で、これらを提示するに至った。己調
査官らは、帳簿類を預からせてほしいと求め、乙らから、控訴人Aの平成2年7月期、
平成3年7月期、平成4年7月期の各総勘定元帳計3冊、控訴人Bの平成2年1月期、
平成3年1月期、平成4年1月期の各総勘定元帳計3冊、売上帳2冊、請求書4冊、
手形帳1冊を預かり、これらにつき預り証(甲8号証)を差し入れた外、甲から、定
期預金メモ、売上除外に係る受取手形・小切手を取り立てるための普通預金口座の通
帳の1頁見開き部分、売上除外金額集計表の各コピーの交付を受けて、いずれもこれ
を持ち帰った(定期預金メモ等については、交付を受けたのが上記総勘定売帳等のよ
うな原本ではなく、コピーであり、もらったものである〔返す必要はない〕という理
由で、預り証〔甲8号証〕に記載しなかった。)。
辛統括調査官は、同日午後4時過、己調査官らから復命を受けるとともに、同調査
官らが持ち帰った上記各資料を預かった。辛統括調査官は、復命を受けた内容により、
査察部が強制調査をするのが相当な事案であると判断し、査察部の壬総括査察官に対
し、電話で、控訴人ら2社がそれぞれ各期約5000万円、控訴人Aについては約2
億6000万円の所得の過少申告をしている旨を告げ、上記各資料のうちの、定期預
金メモ、普通預金通帳の1頁見開き部分、除外金額集計表のコピーをファクシミリで
送信した(この時点より前に、辛統括調査官ないし今治税務署職員が、控訴人らの件
で査察部に連絡したり、査察部から指示を受けたと認めるに足りる証拠はない。)。
(14) 翌13日、庚調査官は他の税務調査の予定が入っていたが、己調査官は、そのよ
うな予定がなかったため、上記各資料の解明作業を行うつもりで、辛統括調査官等か
ら控訴人らに対する税務調査を行うよう指示されるのではないかと待機していたが、
結局、そのような指示がないまま終わった。
(15) 他方、査察部は、同月12日、職員を派遣して、松山地方法務局今治支局におい
て控訴人らの各商業登記簿謄本(甲36、37号証)、愛媛県越智郡波方町役場にお
いて筆頭者乙及び筆頭者丙の各戸籍謄夲(甲38、40号証)、今治市役所において
世帯主乙及び世帯主丙の各住民票(甲39、41号証)の交付をそれぞれ受けた。
また、査察部では、前記のとおり控訴人らに対する内偵調査中であったところ、辛
統括調査官から連絡を受けた内容により、控訴人らに罪証隠滅のおそれがあると判断
し、当初の予定を早めて、翌13日午後、高松簡易裁判所裁判官に対し、控訴人Aを
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犯則嫌疑者とする法人税法違反の嫌疑事実(平成3年7月期が隠ぺい所得額6873
万円、ほ脱税額2577万3000円、平成4年7月期が隠ぺい所得額1億3014
万2000円、ほ脱税額4880万3000円、平成5年7月期が隠ぺい所得額61
43万1000円、ほ脱税額2303万7000円)により、控訴人らの各本社事業
所及び附属建物、乙及び丙の各居宅等並びに金融機関の支店等につき、各臨検・捜索・
差押許可状を交付するよう請求した。そのうち、d農業協同組合1か所に対する臨
検・捜索・差押許可状の交付請求の資料として、前記のとおり今治税務署の辛統括調
査官からファクシミリで送信された資料を添付した。
そして、査察部は、同日夕方発付された上記各許可状に基づき、同月14日、控訴
人らの各本社事務所、乙及び丙の自宅等を捜索し、帳簿類を押収した。また、己調査
官らが控訴人らから預かり、今治税務署で保管して

 

 

 

本件訴訟と別件訴訟とは、原告会社及び被告税務署長をそれぞれ異にしているが、ノウハウの帰属を
巡る問題がいずれの訴訟においても主要な争点であるとみとめられること、原告会社に対する更正処分
等は、別件訴訟における被告税務署長との連携調査に基づいてなされたものであり、本件訴訟と別件訴
訟に係る各処分の時期も近接しているほか原告訴訟代理人も共通していること、両事件における原告会
社相互間及び被告税務署長相互間にいずれも強い結びつきが存するから、実際に提出されるであろう証
拠資料についてもかなりの部分が共通することが予想されること、以上の事実が認められ、これらを総
合考慮すれば、重複審理による当事者のわずらわしさと裁判内容の矛盾抵触を防止するとの観点に照ら
し、行政事件訴訟法13条6号(関連請求に係る訴訟の移送)所定の関連請求に該当し、本件訴訟は別
件訴訟が係属する東京地方裁判所で審理されるのが相当であるとされた事例
決定要旨
省略
決定
申立人(本案原告) 株式会社A
同代表者代表取締役 甲
同代理人弁護士 升永 英俊
同復代理人弁護士 荒井 裕樹
被申立人(本案被告) 千種税務署長
金川 裕充
同指定代理人 篠原 淳一
同 小林 昭彦
同 朝倉 茂
同 寺澤 寿
主文
本件を東京地方裁判所に移送する。
理由
1 申立人は、主文同旨の決定を求めたが、その理由の要旨は、本件と東京地方裁判所平成
15年(行ウ)第553号事件(以下「別件」という。)とは重要な争点が共通し、行政
事件訴訟法(以下「行訴法」という。)13条6号の関連請求に該当するというものであ
り、これに対する被申立人の意見は、別紙意見書のとおりである。
2 そこで審案するに、一件記録によれば、以下の事実が認められる。
2
(1) 本件は、申立人の平成8年7月1日から平成9年6月30日までの事業年度(以下
「平成9年6月期」という。)、同年7月1日から平成10年6月30日までの事業年度
(以下「平成10年6月期」という。)及び同年7月1日から平成11年6月30日ま
での事業年度(以下「平成11年6月期」という。)の法人税について、被申立人がな
した平成12年8月29日付けの各更正処分ないし再更正処分及び各過少申告加算税
賦課決定(以下、これらを「本件各処分」という。)について、その取消し(ただし、
平成9年6月期の更正処分については申告額を超える部分の、平成10年6月期及び平
成11年6月期の各更正処分については平成11年11月26日付けでされた更正処
分に係る金額を超える部分の取消し)を求めた抗告訴訟である。
(2) そして、本件に至る経緯の概要は、次のとおりである。すなわち、昭和62年7月
1日に設立され、住宅用建材等の仕入販売、住宅建設用地の敷地調査等の住宅関連事業
を営む申立人が、平成7年2月28日付けで、シンガポール共和国に本店を有するB(以
下「B」という。)に対して、在来工法による建築に関するノウハウ(以下「本件ノウ
ハウ」という。)及びデータベースを譲渡する旨の契約(以下「本件契約」という。な
お、この譲渡金額について、当初の価格である20億円は過少であるとして、被申立人
は平成7年7月1日から平成8年6月30日までの事業年度(以下「平成8年6月期」
という。)についての平成9年7月4日付け更正処分で同価格を31億2601万20
66円と認定している。)を締結したことに基づき、平成8年6月期に譲渡益20億円
の未収金を計上し、平成9年6月期に18億円の譲渡益及び2億円の外国法人税、平成
10年6月期に9億円の譲渡益及び1億円の外国法人税、平成11年6月期に9000
万円の譲渡益及び1000万円の外国法人税をそれぞれ計上したところ、被申立人が、
本件契約は架空であるから、申立人が受け取った譲渡代金総額31億円(外国法人税額
を含む。)はBから申立人に対する贈与に当たるとして、本件各処分をした(同時に、
平成8年6月期については減額更正処分を行っている。)。これに対し、申立人は、本件
契約は実体を有するものであると主張して、審査請求を行ったところ、被申立人は、本
件契約が架空であることの理由として、①申立人の85パーセントの株式を保有してい
る株式会社C(以下「C」という。)は、申立人との間では、本件ノウハウの移転に係
る契約書を作成していないこと、②Cは、申立人の設立後においてもCグループ各社と
の間で在来工法による建築に関するノウハウについての供与契約を締結していること、
③本件契約による譲渡の目的物の真正の所有者は本件契約日以前からCであり、その後
のノウハウの追加もCが行っていたこと、④本件ノウハウの基礎データの発表者はCで
あり、また、本件ノウハウには、本件契約日において申立人が知り得なかった基礎デー
タが含まれていることなどを主張した。
(3) 他方、申立人の親会社である東京都江東区に所在するCが、平成7年3月1日から
平成8年2月29日までの事業年度、同年3月1日から平成9年2月28日までの事業
年度、同年3月1日から平成10年2月28日までの事業年度及び同年3月1日から平
成11年2月28日までの事業年度の各法人税及び上記各事業年度の期間に相当する
各課税期間の消費税等について、同社がBとの間で締結した本件ノウハウ使用許諾契約
に基づいて支払ったロイヤリティ等を損金として計上したところ、江東西税務署長は、
本件ノウハウはCが保有し続けているのであるから、上記使用許諾契約も架空であり、
3
同社がBに支払ったロイヤリティは、反対給付のない寄付金であるなどとして、上記各
年度の法人税及び消費税等についての更正処分等をなした。そこで、Cは、平成15年
10月3日、江東西税務署長を被告として、申告額を上回る部分についてその取消しを
求める別件訴訟を東京地方裁判所に提起し、同訴訟は現に係属している。
3 以上の事実によれば、本件と別件とは、原告及び被告をそれぞれ異にしているが、取消
請求の主たる対象であるいずれの更正処分等も本件契約や本件ノウハウ使用許諾契約が
架空であることを理由としており、かつ架空であると判断した理由は、本件ノウハウはC
が取得し、保有し続けていたもので、本件と別件における各原告が主張するように、申立
人に帰属していた(その上でBに譲渡された)ものではないとする点で共通であるから、
本件ノウハウの帰属を巡る問題がいずれの訴訟においても主要な争点であると認められ
る。
また、一件記録によれば、本件各処分は、東京国税局との連携調査に基づいてなされた
ものであり、東京国税局から提供されたCに関する調査情報と平成11年10月から同年
11月までの申立人に対する直前調査の結果に基づいてなされたものであること、処分の
時期も近接していること、原告訴訟代理人は本件と別件とで共通していること、これらの
事情が認められ、これらからすると、本件の主要な争点が別件のそれと共通であるだけで
なく、両事件における原告相互間及び被告相互間にいずれも強い結びつきが存するから、
実際に提出されるであろう証拠資料についてもかなりの部分が共通することが予想され
る。加えて、本件の訴額が約14億3000万円であるのに対し、別件の訴額が約93億
円であること、本件移送申立てに先立ち、本件の原告訴訟代理人から、別件における「双
方の主張立証を見た上で、本件訴訟での主張・立証を行いたく、別件の審理がある程度進
行するまで、本件の審理進行を事実上中断していただきたい」旨の平成15年10月1日
付け上申書が提出されていること、以上の事実が認められ、これらを総合考慮すれば、重
複審理による当事者の煩わしさと裁判内容の矛盾抵触を防止するとの観点に照らし、本件
は別件との関係で行訴法13条6号所定の関連請求に該当し、しかも、本件は別件が係属
する東京地方裁判所で審理されるのが相当であると判断する。
4 この点について、被申立人は、関連請求に当たるためには、それぞれの訴訟物を類型的
にみて、その要件事実の主要な部分が共通していることを要するとした上で、別件におけ
る要件事実は、C及びグループ企業がBに支払ったロイヤリティーの「寄附金」該当性で
あるのに対し、本件訴訟におけるそれは、本件契約に基づいて受領した譲渡代金の「受贈
益」該当性となるから、両訴訟の間に共通性を見い出せない旨主張する。
しかしながら、別件におけるロイヤルティが「寄附金」に該当し、本件における譲渡代
金が「受贈益」に該当するためには、いずれも本件ノウハウが申立人ではなくCに帰属し
続けているという同一の事実の主張立証が不可欠であって、かつその事実の存否が主要な
争点となることは容易に推測することができる。そうすると、被申立人の見解を前提とし
ても、本件が別件との関係で行訴法13条6号所定の関連請求に当たるとの前記判断を覆
すことはできない。